第2話「二年記念日(仮)」



「待って!?待って待って…え?ちょっとごめん、もう一回言ってくれへん?」


「だから、愁太郎しゅうたろうから連絡がき…」


「わぁーーー!!もういい!ストップ!!!」


(自分から聞いといて…)


「あ、今自分から聞いといてなんやねんこいつ腹立つなぁとか思ったやろ」


「うぐっ…そ、そこまではさすがに…」


「思ったんかい!」



大学のイチョウの木の前のカフェテリア。授業の空きコマを利用して、そこで友人のつむぎに今朝の出来事を報告していた。



「ていうか愁君さ、音信不通になってどれぐらい経ってたっけ?」


「実は今日で丸一年…」


「丸一年!!?っはぁーーよう連絡してきよったなあいつ!」



関西出身の紬は声も反応も大きい。ましてや関西弁なので、今みたいに叫ばれたもんなら、一瞬にしてその場の注目の的となる。


知り合った当初はその勢いに引いたこともあったが、さすがにもう慣れてしまった。



「実は昨日がさ…二年目の記念日だったんだ、愁太郎との。」


もちろん、空白の一年を“恋人期間”としてカウントしたらの話だが。



そんな私の言葉に小首を傾げること五秒、はっと目を見開いたかと思えば、事の衝撃に大きさに声にならない様子だ。



去年の今日、つまり前日に一年記念日を終えたばかりのその日。


彼…愁太郎はぱったりと私の前から姿を消したのだった。


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