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ドタドタドタ…
重い足音が深夜の住宅街に小さく響く。
その音の主である男は息を切らしながら走っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
ひったくりをしたのは今回が初めてではない。
不況の波に煽られて、派遣社員として働いていた男はあっけなく契約を切られた。
新たな派遣先もすぐには見つからず、当面の暮らしに困っていた時、軽い出来心で老婆の鞄を盗んだのが始まりだった。
それ以来、派遣先が決まった今でも小遣い稼ぎの気分でひったくりを繰り返している。
「盗まれる、奴がまぬけなんだ!」
深夜の誰も歩いていないような場所を警戒心もなく、スマートフォンをいじりながら歩く若い女性。
「襲わなかっただけましと思え!」
これは授業料だ
自分を正当化する為の独り言をぶつぶつと唱えながら、男は走っていく。
もう少しで終電間際の駅に辿り着く。
その安堵感からか少し走る速度を落とした、その時だった。
黒い影が男の顔めがけて勢いよく降ってきた。
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