第58話 魔物の通じ

「居た」


 自分達は協会に続く橋の上で死者共が集まってるのを確認した。前も後ろも死者が溢れてて中心にいる奴が絶体絶命。そしてその中心の人物はやっぱりブリンだった。てか今この町で動いてる生者は自分達位だから自然とそうじゃないかな……とは思ってた。橋に追い詰められてるブリンはマントを深くかぶったままで橋の中央の左側で膝を折った状態で腰の剣を抜いて死者たちと対面してる。

 

「なんだか変?」

「確かに……あいつ何やってるんだ?」


 メルルとドラゴがそんなことを言う。けど確かに変ではある。わざわざ敵の前でしゃがみ込む様なやつではない。しかもブリンなら、死者達にアソコまで追い込まれるってのも可笑しい。技術はドラゴが上だが、ブリンは魔物らしく力は人の比ではないし、それに瘴気の影響だって自分達程では無いはず。多分だが……まだ正気を保ってる様に見えるし、うさオークよりは耐性があるんだろう。

 正気を保ってるからこそ、死者たちに剣を向けてる訳だろうしな……

 

「脚でもやられた?」

「その可能性はある……か?」


 自分の考察にドラゴが同意するようでしてない? ドラゴはよくブリンと手合わせしてるから、自分よりも正確にその実力を把握してる。お互い本気の本気で手合わせやってるかは知らないけど、ほら言うじゃん。一流の剣士同士は一太刀合わせれば相手の実力がわかるって。だからブリンのことをわかってるドラゴからしたら、死者程度にはブリンは遅れは取らないみたいな感じなのかもしれない。

 

「どうする? 下から回るか?」


 ブリンの奴をこのまま見捨てるなんてことはしない。けど、自分達がブリンの元まで行くすべがない。橋の出入り口は死者共で溢れてるからな。だからこそ下から……と思ったわけだけど、二人の反応は芳しくない。

 

「下って言っても……」

「ああ……これは……な」


 二人の反応もわかる。だって橋が跨いでる川が自分達の知ってる川ではなくなってる。何ていうか……紫色してる。勿論生物なんか異なさそうで魚の死体が大量。しかもなんかボコボコと沸き立ってる? 熱いのかは分からないが、ボコボコとしてるんだ。アレに入ろうとは思えないよな。下手したら入った瞬間、あの魚達と同じ運命を辿るかもしれない。

 それは嫌だな。

 

「メルル……ここからブリンに魔法と届くのか?」

「届く……けど、今は無理」

「なんで?」

「この魔法を……維持するので精一杯……それとも解除……する?」


 どうやらメルルも相当の無理してこの結界を維持してるみたいだ。

 

「それは駄目だな」


 流石にこの結界を解除して……とは行かない。多分この結界を解除した途端に自分達は動けなくなるだろう。それは本末転倒だ。けどそうなると、ブリンを救うす術がない。

 

「強行突破しかないか……」


 ドラゴのその発言しか事実上術がない。薬草を投げるとかも思ったが、どうやらブリンの奴は持ってるみたいだ。さっきからなにやらむしゃむしゃしてる。でもそれなら怪我は治る筈。メルルが薬草に祝福を付加して、効果高くなってるんだしな。じゃあ何故にブリンはあんな所でへたり込んでるのか……グズグズ考えても仕方ないか……そう思ってるとブリンの奴はなんとこの死の川みたいな川にとびこんだ。

 

「ブリン!!」


 思わずそんな声を出してしまう。獲物を失った死者達がこちらに気付く。けど、それよりもブリンだ。いくらあいつでもこの川に浸かり続けるのはまずい。川の流れに沿って自分達は走る。そして下に降りれる階段があった。そこから降りると、ブリンはグダっとしたブリンが流れて丁度流れてくるところだった。

 

「ブリン手を伸ばせ!」


 まずい……このままじゃもっと流される。だけど、ブリンは動かない。きっと予想よりもダメージが大きいだろう。そうして、自分達の側を流れていってしまう所で、何かが僕の腕に巻き付いた。それはニュルッとしててひんやり冷たい……そんな感触の何かだった。

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