第59話 謎の声
「うわ!? なんだこれ?」
自分は思わずそう叫んでた。だっていきなり変なぷにぷにした触手みたいなのが伸びてきたんだよ。そりゃあ驚くよ。だってこの川に引きずり込もうとしてくるかも知れない。そうなると不味い。自分は何とかこの触手を自身から剥がそうと試みる。けどぷにぷにの触手は上手く掴めない。
「この!?」
『待ってください! 引き剥がさないで!』
「!?」
頭の中に響いた声に驚いて自分は辺りを見回す。けど死者以外には何もいないような?
「どうした? 早くそれを剥がしてブリンを助けるぞ! じゃないと不味い。今は何かに引っかかってるようだが、次流されるともうこの川に入るしかなくなる!」
何かに引っかかってる? 自分は川に流されないブリンを見て、この触手を見た。
(まさか……この触手が止めてるのか?)
(その通りです。だから早く私ごと引き上げてください!)
「ぬおおおおお!?」
心の声にさらなる声が応答した事に自分は変な声を上げてしまった。そんな自分を見てドラゴが言ってくる。
「遊んでないで早くしろ!」
遊んでなんてない! ――と言いたいけど、ドラゴ達には多分この声は聞こえてないんだろう。これが聞こえてるのは自分だけ……そして多分この声はこの触手が触れてるから聞こえるんじゃないだろうか?
「ドラゴ! この触手を引っ張るぞ!」
「は? 何言ってる?」
「良いからやるぞ! これが唯一ブリンを助ける方法だ!」
触手はしっかりと自分の腕に巻き付いてる。けど引きずられることは無いんだ。つまりこの声のとおりに友好的な何か……と今は考えよう。なんかとても可愛らしい声だったしな。同じ歳位の女性の声っぽかった。
「くそ、わかったよ!!」
自分の勢いに押されてドラゴが触手をつかむ。ヌルヌルしてるからやりづらいが、自身も後ろに下がりつつ、触手を引っ張る。するとプリンがこっちに近づいて来た。それを確認して、更に自分達は触手を引く。そしてなんとかブリンを引き上げた。
「メルル!」
「これを使って」
そう言ってメルルは薬草を煎じた粒を出した。自分はそれをプリンの口に押し込んで、腰に挿してた水を流す。すると何とかプリンはそれを飲み込んだようだった。そしてその身体が光り、瘴気が浄化されてく。けどすぐに動ける程になるわけではないようだ……それはそうかと思う。だってプリンの身体は所々が紫になってる。瘴気が身体を犯してる証拠だ。
でも今の薬でその斑点も小さくなりつつある。しばらくすれば目を覚ますだろう。
「急いで移動したほうがいいぞ」
「そのようだな……」
死者たちがすぐそこまで迫ってる。ここの階段は一箇所しかない。そこには既に死者たちが集まってて、狭い階段で渋滞してた。
「ブリンの事頼めるか? 俺が道を切り開く」
「それしか無いよな」
戦闘力は自分よりもブリンのほうがあるんだ。異論なんてあるわけない。自分はブリンを背負う。そして剣を構えたドラゴの後について行く。飛び出したドラゴがその剣で階段で右往左往してる死者を叩き切り、一気に上の道へ出る。けどここからが問題だ。周りは全部死者だらけ。この数をドラゴだけでなんとかできるのか? けど信じるしかない。自分の仲間を。
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