第24話 決着
ゴブリンが勢い良く飛び出していく。そして走りながら自身に身体強化の魔法を掛けたのか一気にスピードが上がった。そしてボロボロの騎士に迫ってた剣を受け止める。
「なっ……あぁ?」
目の前の状況に頭がついていかない騎士。再び現れたゴブリン。そいつが自分達を守るようにスーパーゴブリンと戦いだしたんだから当然。実際はあのゴブリンに騎士を守ってる気はない。そんなことをする義理は全くないからな。ゴブリンはただ同胞を開放したいだけ。その怒りと悲しみから。騎士は十分に代償を払った。そう思ったから、あのゴブリンはその剣を受け止めたんだ。
けど流石に憤怒にまみれたあのデカイゴブリンを普通ではないといっても普通サイズのゴブリンだけで三体も相手にするには厳しい。スピードが上だから避ける事はどうにか出来てる。でも一発でも当たれば終わり。自分達もここで見てるだけには行かない。
「ドラゴ、デンドさん!」
「お前も来る気か? って言って聞くお前じゃないな」
「当然!」
右手なんてなくたってどうにかなるさ。ここで隠れてたら勇者じゃないだろう。とりあえずスーメランさんに補助魔法を掛けて貰う。メルルは既に魔力がヤバイ。流石に魔法をあんなに連発したからな。いくら魔術師としてはその歳では異例と言える程の天才でも魔力の量には限りがある。後撃てるのはとっておきらしい一撃だけらしい。
それはかなりえげつない威力してるらしいから自分達はメルルの準備が出来るまで持てればどうにかなる。それがとてもむずかしいと言うのはわかってる。でもやるしか無い。
「一つだけ言っておく、お前は絶対に一人で奴等の相手はするな。すきを点くだけでいい。ちょこまかとしとくんだぞ」
デンドさんが自分にそう言ってくる。それは勇者としてどうなのかと思うけど、それだけだ。素直に頷く。だって自分はその程度だとしってる。左手には短剣しか無いんだ。これじゃああのスーパーなゴブリンには傷一つつけれないだろう。けどそれでも自分も行く!
三人でゴブリンに続いて戦闘に参加する。とりあえず、邪魔な騎士には下がるようにデンドさんが言った。騎士はボロボロだからその言葉を甘んじて受けた。生きてる奴等をかき集めて拠点の端へと引きずってく。騎士に恨みがあるスーパーゴブリン達がそれを許すかわからなかったが、理性なんて物を何処かに落としてきた奴等は動くこっちに意識を集中して、騎士達の行動には気付いてないようだった。
「はあ……つっ! ……ぬがっ!?」
開始五秒も立たず自分は三回は死んだんじゃないかと思う。実際ゴブリンが居なかったら死んでた。まともにやりあえてるのはゴブリンだけ。デンドさんもドラゴも死んではないけど、死にそうではあった。それだけこのスーパーゴブリン三体という構図はやばかった。実際その強さは知ってるつもりだった。一度は相対してたんだからな。
けどあの時はただ幻術魔法を掛けるその一点で正面から倒す気だったわけじゃない。それでもこのスーパーゴブリンのヤバさはこの手で証明したはず。なのに軽々と超えられた感じ。直ぐに下手に近づけなくなった。ゴブリンとドラゴとデンドさんが必死に戦ってるのを後ろでウロウロしてるのが自分という勇者である。いや、ホント自分がどうして勇者なのかと、この時切実に思った。
でもそんなのいつものこと、いつもいつだって誰にだって言われて思った。勇者って何なのかってずっと考えてきた。答えなんてわからない。ただこの自分という存在に与えられた称号。けどそれは果てしなく重く、辛いもの。だからただ自分は一つの答えを出した。正解かなんてわからない答え。それは……
(ルドラ)
メルルの声が頭に響く。それはデンドさんもドラゴもゴブリンも同じだろう。メルルの準備は出来た。後はこのスーパーゴブリンを一箇所の場所に集めて、メドさんの魔法で固定するだけ。それは一瞬でもいいんだ。それで決まるとメルルは言ってた。自分は意を決して一体のスーパーゴブリンの背後から背に乗り、右腕を首にかけなんとか落ちないようにしながら、残ってる左手に持ってる短剣でその目を掻っ切った。これが自分には精一杯。
背に手を回して自分を掴んだスーパーゴブリンは怒り込めて思いっきり投げる。その腕力は凄まじく、空を軽々と飛べた。
「ルドラ!!」
「ダメだ! 後は頼んだぞドラゴ!」
自分を助けに来ようとしたドラゴを制してそういった。大丈夫、こっちは大丈夫さ。その言葉をうけてドラゴは再びスーパーゴブリンと相対する。一体の目は潰した。あのゴブリンを中心に他の二体を上手く誘導すれば……後は皆を信じるしかない。大丈夫だろう。だって皆、自分よりもよっぽど頼りになる。そう思ってると光の柱が空に上った。
綺麗だな。そう思いつつ、自分は地面に落ちていく。
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