第13話 片腕
口の中に入った剣と腕を同時に咀嚼する改造ゴブリン。自分はその痛みと溢れ出す血に耐えきれずに膝を地面に着く。そんなに改造ゴブリンにダメージは入ってない。次、攻撃を受けたら終わり……けど−−
「があああああああああ!!」
そう叫んだ改造ゴブリンは何かを目指して走り出す。どうやらうまくいったようだ。腕一本を犠牲にしてなんとか……支えられなくなった体が、横に揺らいでそのまま地面に倒れた。
「ルドラ!!」
顔面蒼白な顔のメルルが近づいてくる。そして自分の状況を見るなり、喉を一回鳴らしてちょっと引いた。けど、すぐに頭を振って詠唱を始める。暖かな光が出血を止めてくれる。そしてしばらくすると傷も癒えた。
けど、流石に生えてくる−−なんてことはなかった。
「食べられた腕があれば……自分の魔法でも繋げることはできると思うけど……」
「多分もうグチャグチャだろうな……」
肘くらいからなくなった自分の腕を見る。旅を始めてすぐにこれって……しかも相手は普通ではないとはいえゴブリン。これからが思いやられる。てか、まだ今ここでのことも終わってはいない。
「街に戻ったら教会に……聖職者様なら再生できる」
「そうだな……金かかるけど」
聖職者は再生魔法というのが使える。再生魔法は回復魔法の上位版で神の祈りを受けたものしか使えない。だから基本、再生魔法を使えるのは教会のものだけだ。聖職者なのに金を取るのはどうかと思うわけだけどね。
けど、背に腹は変えられない。片腕ではこれからの旅に支障が出る。
「でも、今はこのままで行くしかない」
自分はなんとか立ち上がって、改造ゴブリンの行くすえを見つめる。木々が倒れてその道筋はわかりやすい。自分の剣は奴の内側に傷をつけた。それでメルルの幻術魔法が発動した。だからなんとか生き残れた。あの瞬間から奴には逃げていく自分が見えてたはずだ。そうでないと生きてない。
強敵だった……本当に。
「行くぞ、メルル」
「うん」
僕たちは改造ゴブリンの後を追う。うまくいってるだろうか? それを確認したらでっかくなってないゴブリンをみんなで狩る。
「うお!? お前その腕……」
「かすり傷だろ?」
「んなわけあるか! まあ、生きてるのならなんとかなるか」
「そういうことだ」
合流したドラゴが自分の体を見て驚いてた。当然か……デンドさんも何かいいかけたけど、自分が気にしてない風を装ったから何も言わなかった。みんながいるってことはうまくいったんだろう。
騎士団の駐屯地を見ると改造ゴブリン三体と戦闘に入ってた。いきなりのことに驚いてるような騎士団たちはいい気味だ。この腕の分も苦しめと思う。
「じゃあ残りも計画通りに行きましょう」
みんなが頷いて自分たちは残りの小さな改造ゴブリンを狩りに動き出す。
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