第9話 踏ん張り
「どう思いますか?」
「はっきり言ってここまでだと思うんだが? 奴らが何をしてるのかわからんが自分たちでは限界があるぞ。ゴブリン討伐は一定の成果を上げたってことでどうだ?」
そういうデンドさんの言葉を自分はわかる。あんな意味不明なことをやってるやつらの相手を自分たちだけでやるのは危険すぎる。それに騎士が関わってるってことは国が関係してるってことだ。
それに一介の冒険者が下手に関わったらどうなるか……最悪消されるかも。まあこの依頼を自分たちが出した時点でその可能性はあったわけだけどね。そもそも僕を殺すための策だろうし……けど流石にこんな訳の分からない状況になるとは思ってなかった。
あんな……思い出しただけで胸に何かがつかえるような……
「そうですね。そう……なんですよね」
流石にこれ以上は契約の範囲外。当たり前だ。あんな魔物を改造してるかのようなのの相手なんか依頼の達成金とか考えると少ない。依頼主は自分たちなんだし増額すれば……とも思うけど、流石にあんな改造ゴブリンども倒しきって騎士もどうにかしてって持ち合わせを全部吐き出しても足りないと思う。
彼らは冒険者……損得で動くのは当然だ。これ以上デンドさんたちを縛ることはできない。けどよくを言えばもう少し協力してほしい。なぜなら流石に自分たちだけじゃあれをどうにかすることはできないからだ。
「だが……あれを放置しておくと街まで来そうだよなー。お前等はやめる気ないんだろ?」
「そうですね……」
なんでそんなに拘るのかは言えない。疑問には思ってるだろうけど、デンドさんはあんまり詮索してはこない。それは色々と事情がある冒険者の暗黙の了解みたいなものなのだろうか? まあ助かるけど。
「けど、自分たちには貴方達を引き止めることはできません。これ以上お金もないし……」
「俺達はそんなに守銭奴に見えるか? そんな奴をお前は選んだのか?」
そんなデンドさんの問いかけは期待してもいいということなのだろうか? 命をかけてくれるのか?
「貴方達は心と義に熱いと思った。けど……大変ですよ?」
「確かに一回戻ってギルドに報告した方がいいのは確かだな。けどここでやり続ける奴も必要だろう」
「戦力の分散ですか」
確かにギルドに報告すれば討伐隊が組まれて増援が来てくれるかもしれない。けど、どうだろうか? これは多分国が行ってることで領主はグル……報告とかするとギルドに介入してきそうな……
「ギルドには領主とかに言わないようにできますか?」
「騎士が関わってるからか。確かにそっち方面からの圧力は厄介だな。だがどうだろうな……ギルドは基本上や国に縛られてるわけじゃない。だが関係はある」
「事後報告ってことにすれば?」
「そうだな……それしかないか。シン頼めるか?」
「任せといてください」
そう言ってくれるシンさんが街に戻ってギルドに報告する役目を担うそうだ。確かに適任かなって思う。
「あれを複数体相手にできますか?」
自分は確認するようにデンドさんに聞く。すると「あーうー」とか呻きながら「すまん」と手を合わせる。
「さすがに複数はきついな。もっとランクの上のパーティーならできるだろうが、俺たちではきついだろう」
正直だなこの人は。普通は見栄を張ったりすると思う。この人の性格ならなおさらだと思ってたけど、自分はまだまだ人を見る目が低いらしい。豪快で大胆でけど実直なんだろう。こういう場面で自分の実力を偽って生き残れるなんて思ってない。
それもきっと確かな経験。頼りになる人がいると違うな。安心ってやつがさ。
「自分たちだけじゃきつい……それなら、騎士達にも押し付ければいいんじゃないですか?」
それで少しは罪滅ぼしにもなるだろう。自分はそう言っていい笑顔を浮かべるよ。
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