第5話 ゴブリン

「うおおおおおおらああああああああああ!!」


 大剣がゴブリン3匹を一気に両断する。そんな光景に怯んでる後方のゴブリン2匹に氷の矢が脳天を射抜き即死させた。なんとも鮮やかな手際に思わず自分たちは拍手を送るよ。まだ朝も早い時間帯だけど、早く来て早々にゴブリン退治を始めてた。

 

「がははは! ゴブリンなんて何匹いようと敵ではないわ!!」


 そう豪快に笑うのはこのパーティーのリーダー「デンド」さんだ。大剣を携えたバリバリの肉体派。所謂前衛職ってやつだな。で、もう一人の前衛職の人がショートソードに盾を持った「シン」さん。そして後衛に二人の魔法使いの「メド」さんに「スーメラン」さんだ。メドさんは攻撃専門の魔法使いでスーメランさんは補助や回復らしい。

 なかなかにバランスいいパーティーだ。それに一人一人が実力者。今の所、こっちの出番がないほどには皆さん強い。

 

「どうぞ、飲み物です」

「おう、すまんな」


 自分はさっと飲み物を差し出す係とかしてる。いや、一応最初の方は戦う気満々だったんだよ。けどほら、いらないとわかったのだ。ゴブリン程度ではこの人達を止めることはできない。

 

 しばらく森を進む。目に付くゴブリンは倒してきたから、週辺にゴブリンはいなくなった。けどよく考えたらどれだけ倒せばいいとか指定がない。なのでさらに森の奥に自分たちは向かってた。

 

「なんだこれは?」


 あれから何度目かのゴブリンを討伐してる中でデンドさんがそんなことを言った。どうやらこの森のゴブリンには普通にはない特徴があったようだ。

 

「宝石? ですかね?」


 それはゴブリンの首の根元に埋め込まれた丸い赤い石。どうやら普通のゴブリンにはこんなのはないらしい。とりあえず何か高価なものかもしれないし死体からえぐりとる。それとゴブリンの一部もね。

 そうしないと討伐証明にならないのだ。結構グロいけど、仕方ないことだ。すでに数十匹は倒してるからゴブリンの耳とかがいっぱい。

 

「うーん……」

「どうしました?」


 デンドさんが何か難しい顔をしてる。どうしたんだろうか? さっきまでノリノリでゴブリンを惨殺してたというのに。

 

「いや、何かゴブリンの様子がおかしいような気がしてな」

「そうなんですか?」


 自分たちは全然そんなのわかんないけど、デンドさんたちは経験豊富な冒険者だ。そのデンドさんがそういうのならそうなんだろう。

 

「ああ、ゴブリンは確かに魔物だが、こんなに血走ってたりしない。連携も全然なってないしな。まるで暴走してるみたいな……」

「暴走……」


 そう言われて確かに……と思う。入り口付近のゴブリンたちはここら辺の奴らとは違ってまだ連携してた。楽には倒してたけど、油断はできない感じ。けど今は一体一体が無我夢中で向かってくる感じ。

 致命傷を与えてもなんどもなんども向かってくる。その鬼気迫る感じが暴走してるとも言える。だからここらで倒してるゴブリンは傷が酷いことになってる。それに何度もくるから必然的にこちらの体力も持ってかれる。

 まあ戦ってるのはデンドさんたちだけど……けどそろそろ楽してるだけじゃいられないかもしれない。そんな気がしてくる。自分たちは視線を交錯させて互いに頷きあう。そんな折だった。ドッドッドッと響くじ響き。その方向に視線を向けて全員が注視する。そして音がする方に一番近かったシンさんが叫ぶ。


「全員避けろおおおおおおお!!」


 その声に反応して一斉に体を投げた。瞬間、轟音とともに凄まじい衝撃が吹き荒れて体を持ってかれる。幸い木にぶつかることはなかったけど、他のみんなが心配だ。そう思って視線を周囲に向ける……けど、その何かが目を放すことを許さなかった。

 強烈な存在感……そして体が勝手に震えだすこれは内から湧き出る恐怖。木々をなぎ倒し地面に足跡を残して来たそれは3メートルはありそうな巨体に筋骨隆々の緑の体。血走った目は何処を捉えてるかわからず、口からは緑色の液体が流れ出てる。

 そしてそんな液体とともに響き渡る咆哮。音だけで体が後ろに押される。流れ出る汗が知らせてる。こいつはヤバいと。

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