三角関係は楽しく

霜花 桔梗

第1話

私の名前は『荒川 リナ』花の高校二年生だ。

そして、同じクラスの『光本 怜』身長180センチ、成績も学年5位のイケメンでも性格が最悪のはずが……。

「リナ、お前、この前の数学のテスト赤点だったろ、俺が教えてやる」

この事を境に私の心は奪われ、ベタ惚れになってしまった。

まさにムネキュンな日々であった。

私は告白するか親友の『遠藤 みあ』相談してみると……。

『私も怜くんのこと好きなの』と返された。

親友がライバル?

しかも、『私の怜くんと付き合ったら、呪ってやる。毎日、リナの藁人形で……』

これ以上は怖くて言えないけれど、私は頑張って怜くんに振り向いてもらう素敵な女子になることを誓った。


さて、みあとの関係は友達のままだ、怜くん話だけは禁忌が暗黙のルールになってしまった。

みあは大人しく女子力も高いお弁当なんかも自分で作るらしい。

私の方は部屋は汚いし色々ダメダメである。

今度、クッキーの作りかたを教えてくれるらしい。

それでも少し後ろめたい。もし怜くんと付き合えたらお菓子の一つも作れないと恥ずかしくて、みあに教わるなんて。

でも、みあが怜くんと付き合ったら私はみあを恨むだろうか?

うーん、難しい問題だ。きっと泣いて終わりかな。

「何ぼーっとしているの?ちょっとこの本を見てよ、藁人形の作りかたが書いてあるの」

みあは天然で時々悪気のないことをする。

そう思いたいよ……。


学校の階段にて怜くんとすれ違う。

うぅぅ、緊張するな。

胸はバクバクだし、やっは、見た目もカッコ良い。

そして、すれ違うと。心臓止まりそう。

それから、しばらく歩くと後ろから声が聞こえる。

「リナ、お前、何で最近俺を避ける?」

怜くんだ。恋する乙女は避けているように見えるのかな

「いぃぃ、や……避けてなんてないよ」

「そうか?」

どうしよう、嫌われちゃったかな。

「お前、可愛いのだから、もっと自信もてよ」

それは素直に嬉しい言葉だった。

だから、だから、勇気を出して……。

「また、勉強教えて下さい」

「やれやれ、素直になったか」

言えた。また、怜くんと二人きりになれる。

でも、本当は『好き』って言いたかった。

「なら、みあと一緒に勉強教えて良いな?」

「え?」

「あいつも成績が悪いからな」

「う、うん」

「お前ら仲が良いから丁度いいや」

こして複雑な勉強会が決まった。


図書館で勉強会をすることになったのだが。

「みあ?質問は?」

「無いです」

みあは緊張して完全に自閉モード、言葉もほとんど交わさない状態である。

私も前髪を何時も気にして勉強になってない。

デートでないからメイクもそこそこだし、前髪が気になるのである。

「お前ら、やる気あるのか?」

ダメだ、怜くんが怒りだした。

ここは勉強に集中せねば……でも、このドキドキが止まらない。

「うん?リナ顔が赤いな、熱でもあるのか?」

怜くんが私の顔を覗き込む。あぁ、近い近い、体が固まる。

「少し熱ポイかな」

「そうか、仕方ない、今日はこれくらいで終わるか」

怜くんがそう言うとみあは速攻で片づけて帰ってしまった。

みあの事だ、怜くんとの接しかたが分からないに違いない。

「リナ、疲れたろ、甘い物でもおごるよ」

怜くん良いの、てか、これからデートでない?

うぅぅぅ、嬉しい。

「はい、行きます」

何とか勉強会は終わり、怜くんとデートである。



その後、商店街のたい焼き屋で怜くんと一緒にたい焼きを食べる。

私は断然、たい焼きは尻尾から食べる派である。

怜くんは頭から食べていた。

「美味しいか?俺のおごりだって事を忘れるなよ」

「うん、嬉しいよ」

怜くんと商店街を歩きながら食べるたい焼きは最高であった。

こんな幸せ永遠に続けばよいのに。

その夜

夢を見た。

何気ない朝の教室であった。

「おはよう、怜くん」

「おう、リナか、俺、みあと付き合う事にした」

「え?」

「みあは白血病でもう学校にさえ来れないらしい。だから、俺がついていてやることにした」

部屋に朝日が差し込み私を起こす。

そう、夢であった。

もしかしたら、命と引き替えに怜くんと付き合うのでは?

イヤイヤ、夢だ、忘れよう。


嫌な夢を見たな。跳ねた髪を直しながらぼんやりと考えていた。朝早いけど私はみあにメールしてみる事にした。何気ない内容で返事も普通、平穏な日常である。

しかし、気分はブルーだ。それでも支度をして学校に行く。

教室に着くとみあと怜くんが話している。

私はどうしてよいか分からず、自分の席に着く。

このまま怜くんとみあが付き合ったら……私は……この想いは?

「どうした?リナ暗いぞ」

怜くんが話かけてきた。今はつらいよ、あんな夢の後だもの。

「怜くんって優しいのね」

私は作り笑顔で返した、こんな笑顔は初めてだ。

怜くんと出会って、毎日がこんなに楽しかったのに、今は自分の気持ちに整理がつかないでいた。

「そうか?また、たい焼き食べに行こうな」

私は素直に嬉しかった。また、あの幸せな時間が流れることに。よし、夢の事は忘れよう。

「うん、行こう」

私は最高の笑顔で返した。


授業中、カツカツと先生のチョークと黒板との音だけが教室に響いていた。

苦手な数学の授業だけに私は斜め前に見える怜くんを眺めていた。

この想い届くのかな?などとぼんやりと考えていた。

「みんなも知っての通り数学は暗記科目とも言える。何故か分かる人はいるか?」

先生は公式を書き終えると、難題を言ってきた。

そんなの分からないよ。神様、どうか私に答えさせないで下さい。

「ある一定のレベルまでは公式の暗記と問題数をこなす事で解けるからです」

「そうだ、さすがだな、光本……」

すごいや、怜くん学年5位は違うや。私なんて公式を覚えるのが背一杯なのに。

やっぱり好きにならない方がおかしいかったのかな。

すると、チャイムが鳴る。やった、数学の授業終わりだ。

ふ~う、疲れたから休み時間は机で丸くなってよ。

「リナ、数学の授業で最後の公式は重要だから覚えておけよ」

怜くんが話かけてくれた。疲れている場合じゃないぞ。

「うん、たぶん覚えておくよ」

「何か不安だな、要点をもう一度、俺が教えてやるよ」

怜くんが私に近づく。うぅ、ドキドキが止まらない。

たった数分間でも私はしあわせな時間を過ごせていた。

うん?視線を感じる。みあだ。


みあが私達を見ていたらしい。辛いよ、そんな顔で見ないで、私の心はチクチクと痛みを出していた。

そして、みあの顔は五月雨の空の様に曇っていた。でも、怜くんと話したいし……みあは親友だし。あぁ、私も複雑な気分になっていた。

「どうした?リナ、気分でも悪いのか?」

「え?えぇ……」

みあがこちらに来る。その表情は少し和らいでいた。よかった。きっと素直に仲間に入りたいのかもしれない。

「私も話に入れて」

「みあか、お前にも数学の勉強を教えてやるよ」

「ありがとう、怜くん」

みあに笑顔が戻った。笑顔のみあはとても可愛いので心配だよ、怜くん……。

「リナ?何、ぼーっといているだ」

すると、怜くんは私の頭をポンポンとなでるように触れる。わぁ、何だろこの気持ちまるで恋人同士みたいだよ。私の心臓は破裂しそうになっていた。あぁ、恋ってホント、ジェットコースターだよ。

怜くんとの出会いは私の生活を一変させた。

いわゆる、女子力を高めようと必死になっていた。

それでも怜くんのことを考えると幸せだった。

慣れないメイクもチャレンジ……失敗して母親に何それと言われてへこんだり。

ファッションだって背伸びをして金欠に。

さて、一番の問題はみあである。

この複雑な人間関係は私にとって最大の試練である。

でも、この恋は止まりそうもない。

私の長所は前向きに生きることである。

「えへへへ、怜くん大好き」

一人部屋の中で呟く私であった。

うん?

みあからのメールだ。

『山椒の実ってどこに売っているかな?』

山椒の実?山椒ってウナギの蒲焼きとかにかける粉?実が欲しいって?

何に使うのだろう……やはり呪いや黒魔術師に使うのかな。

私は先日の悪夢を思い出した。みあが命と引き替えに怜くんと付き合う夢である。

ここは適当な返事を返そう。

『ウナギの売っている魚屋とか』

うーん、我ながら適当過ぎたかな。

『ありがとう、探してみる』

いや~信じた。まずかったかな。



それから、みあは日に日にやつれていた。

私は……決断をしなければならないようだ。

怜くんを諦める。こんなにも好きなのにみあの為に諦める。

心は張り裂けそうな気持ちであった。

私は怜くんにみあと付き合うことを勧めた。

怜くんは少し寂しけに。

「俺、リナのこと好きになりかけていた。お前がみあを大事に思うなら、諦めるよ」

私は言葉を失った。涙がこぼれ、その夜は一晩中泣いていた。

翌日、みあと話す事にした。

「ダイエット!!!!!!!」

みあは呪いや黒魔術師ではなく、ダイエットだと言った。

私バカじゃん、変な夢を信じて、みあも普通の恋の努力だった。

こうして、三角関係は続くことになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

三角関係は楽しく 霜花 桔梗 @myosotis2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ