第64話 隠密行動
翌日、特務隊の出動の日がやって来た。
魔法都市を出たのは日の出前、古城に着く頃には朝日が差しているだろう。
強い魔物になれば太陽が出てる出てないなど、あまり変化は少ないが、それでも少しでも魔物が弱っているであろう時間帯を狙って潜入する。
全て駆け出し冒険者のハナを気遣ってのことなのだ。
なぜそこまでしてハナ、聖石捜索に重点を置くのか?
リコは一方的だったが惚れた男性の忘れ形見のハナを大事に想っている。
ダイはきっと団長だけを行かせてしまった事を未だに悔いているのだろう。ハナを通じて恩返しをしたいといったところか…。
バトはハナを支える、ハナのパートナーとなって護ると決めた騎士。
シムはバトを追いかけている剣士、彼と共に戦えるなら何処へでも行くだろう。
特務隊メンバーそれぞれにも参戦の意味はある。
なによりもギルドメンバーのために出来ることはやってあげたいのだ。
聖石をハナが手にしたときに全てが明らかになる…
自分達の人生に、これからの世界の未来にとっても、掛けてみるだけの価値のある大博打。
ダイは以前、現職騎士団長カルの質問に対してこう応えていた。
「ハナがオヴェリア姫の生まれ変わりだと今も信じているのか?」
「もちろんだ」
と。
カルもその言葉に呼応して騎士団出兵という重い腰を上げた。
小さな少女の決断で今まさに未来を占う大戦が始まろうとしている…
「ここから先は悪気も濃くなってくる、油断出来ないよ」
古城の裏に回るため小高い山の森を進む特務隊。先頭は指示を出しながらノノが務めている。
森の中は枯れ枝などが無数に落ちていてバキバキとうるさい。
だが、ノノの歩く音だけは聞こえない。
これが追跡者のスキル、サイレントウォーク。
まもなく朝日が森にも差し込んできた。
すると森の隙間から見下ろす形で古城が見えた。
薄暗い霧に包まれた地獄の世界は、朝霧と朝日によってほんの少しの輝きを見せ、かつては美しい城だった面影を残していた…
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