第65話 かつて聖都と呼ばれた古城にて…


 特務隊はノノルルの隠密行動により、安全に古城の裏から侵入するのとができた。


「ドンピシャ!魔物は居ないね」

 ドヤ顔で振り向き、安堵のひょうじょうを浮かべるノノ。


「…油断大敵」

 ルルが呟くようにノノに突っ込みを入れる。


「ありがと二人とも助かったよ」

 リコもとりあえず第一段階クリアといった感じ。


「こっからが本番だがな」

 大斧の手に取り、臨戦態勢になるダイ。

 バトも大剣の柄に手を伸ばしている。


 いつも思うのだけれど、この二人は特に重い武器をいとも簡単に扱う…なんて筋力なんだろう…

 ※ハナが武器の扱いに疎いだけで、武器を扱う者は、ある程度重さを低減できるスキルが存在している。


「地下には外の戦闘とは無縁の、定着した魔物もいるはず、気は抜けないよ」

 さすがここに来たことがあるノノは色々と詳しい。


『マスターマスター』

 と、悪気で充満した古城内にも関わらずベルちゃんが現れた。

「ベルちゃん、平気なの?」


『ハイ、マスター、オヴェリア様ヲ感ジマス』


「そっかここはオヴェリア姫の居城だった場所、聖霊の力も衰えないのかな」

 しかし、オヴェリア姫が亡くなって千年、それでも力を感じるって…どんだけ強いの姫様…


『イエ、マスターカラ感ジマス』


「アタシから??」


 ベルちゃんのテレパシーで会話していると…


「アンデッドだ!」

 ノノとならんで先頭を行っていたダイが後続のアタシ達に叫ぶ!


「シム!」

「あぃさー!」

 バトがシムと共に前衛に上がる!


「ハナちゃん、私から離れないでね」

 リコさんは常にアタシを庇ってくれてる…

 本当は前衛で戦うことが彼女の役目でもあるはずなのに…


『ブロードスラッシュ!』

 バトが得意の凪ぎ払いで複数の魔物を蹴散らす!

『マキシマ!』

 魔物を怯ますやいなや、シムがチェインで次々と斬り裂いていく!


 ハナは後衛で魔物の姿を正確に把握できていないが、物凄い攻防戦になっているのだろう…とまるで蚊帳の外の存在。


『バックスタブ!』

『スパイクブロー!』

 ノノの回り込みスキル、ルルの多段スキル、どちらも鮮やかで切れ味抜群の瞬殺技!


「おぉーりゃああぁー!」

 ダイも負けずと大斧を振り回し、魔物を凪ぎ飛ばしている。


「この先の階段よ!」

 ノノが華麗に魔物の攻撃をかわしながら皆に伝える。


「悪気のせいで数が多すぎる。道を作れ!バト」

「おぅ!」

 ダイの言葉でバトは気を溜めはじめる。

「時間稼ぎしとくよぉー」

 シムが素早くバトの前に躍り出て連撃スキルでバトに魔物を近づけさせない!

 見事な連携だ!


「ハナちゃん、バトが道を作ったら走るよ!」

 そういうとリコはハナの手を取り、強く握った。

 こんな場面でも手を引かれて付いて行くだけなんて…アタシは…


『ハリケーンスラッシュ!』

 前方に渦を巻いた斬撃が炸裂!

 階段までの一直線に道が開かれた!


「走れー!」

 ダイの掛け声で一斉に階段へと走り出す一行!

 ハナもリコに手を引かれて走り出す。


 しかし、野犬ゾンビの反撃が速く、飛びかかってくる!

 両脇でリコハナを庇うようにノノルルが野犬ゾンビを払う!

「リコ!あなたは止まらないで!」

「うん!ノノありがと!」

 皆…アタシを護るのを優先させてくれてる…


「あっ!」

 ノノルルの迅速な攻撃にも怯まず、野犬ゾンビはさらに数を増して走り込んできた!


『ヒールアタック!』

 危うくノノに噛みつこうという野犬ゾンビをハナの咄嗟のスキルで消し去ることに成功した!


 ノノは素早く体制を立て直し、野犬ゾンビを退ける!


「お見事」

 ルルがリコに並行して戦いながらハナにエールをくれた。


 全員が階段を駆け降りると、野犬ゾンビやその他の魔物はもう追ってこなかった。


「ふぅ…定着モンスターなんだろうね、エリアが違えば追っては来ない」

 テリトリーなのか、魔物の中にも色々と決まりがあるらしい。


 薄暗く寒気のする城内だったが、地下へ降りてくるとさらに寒気さは増し、異様な静けさも恐怖を倍増させている…


「魔物の気配は無いね…ちょと休めるかも」

 ノノは感知スキルで周囲を見張る事が出来る。

 すると、

「ハナ、すまないが少しヒールしてくれ」

「あ、はい!」

 バトが自分からこういうことを人に頼むのは珍しい。


 腕や肩に無数の傷を負っていたバト…

 ヒールを掛けながらハナは自然と流れ落ちる涙を止められなかった。


「バカ、ハナ、こんなことでいちいち泣くな」

「でも…アタシなんにも出来ない…」

 前衛で傷付く仲間…戦闘なら当たり前の事だが、ハナはそういう事に慣れるほどの経験もまだ積んでいない。


「さっきのヒールアタック、助かったよ。君は十分役に立っている。自信を持って」

 ノノがお礼と、笑顔でグッジョブ!と親指を立てて見せる。


「うん。ハナちゃんは負けてない」

 リコも笑顔でハナを励ます。


「僕もぉ、回復して欲しいなぁー」

 シムが羨ましそうに言う

「唾つけとけ」

 ダイが二人の邪魔をするな、と言いたげにシムを一括した。


「あ、はいー!次やります!」

 束の間の休息でこそ、回復役は忙しくなる。

 これはこれで十分役に立っているんだ…

 ハナはつい泣き出してしまった自分を恥じた。

(泣き虫…直らないなぁ…)


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