第59話 突破口


(剣が軽いシムでは挑発にもならない、重さでは俺、バトか…)

 ダイはその高い戦略的な思考が認められて、近衛時代から今のギルドでも副官として活躍してきた、斧使いの筋肉質の屈強とした見た目からは想像も付かないが、頭のいい男なのである。

(バトを防御役にしていてはダメだ、流れを変えなくては…)


「バト退け!次は俺が受ける!」

「わかった」


『ブオォォォォ!』

 地竜は雄叫びをあげてこちらを挑発している。


(シムに決めさせるためにも逆側から!)

 現在、少し遠退いているが地竜の左側に孤立しているシム、陣形は取れていないがダイ側から隙を作れば好機となる立ち位置でもある。


(重い攻撃を与えて目を反らすことが俺の役割だ)

 ダイは気を高め、地竜の右首筋を狙って飛び込む!

「ハードヒット!」

 大斧と体重の全てをスキルに乗せて"重さ"を上げるスキル技!

 地竜はそれを左前足の固い二の腕で防ぎに来る。

(左脇が開いた!)


「バト!」

「おぅ!」


 護りに徹していた超攻撃型騎士がついにベールを脱ぐ!

 呼応してシムが左側から駆け出している!


『ブレイク!』

 ※破壊スキル"ブレイク"、主に固い鱗や皮膚に覆われた相手にダメージを与える技。


『ブガッ!』

 開いた左脇に小さな傷を付けた!

 しかし、まだ傷は浅い!


『ハードヒット!』

(まだだこっちを見ていてくれなきゃ困る!)

 ダイが追い討ちで右袈裟に大斧を振り下ろす!

 重い攻撃にたまらず地竜はダイを付け狙う。


『マキシマ!』

 一気にシムが地竜の左脇に詰め寄る!

「こぉこだぁー!」

 気を充分に溜め込んだ会心の一撃!

『セブンソード!!』

 小さな傷口にシムの高速7連撃が炸裂!


 地竜の左脇から激しく血飛沫が上がる!

「バトさぁん!」「バトいけー!」

 地竜は痛みで大きくのけ反っている。トドメを指せる攻撃力を持っているのは彼しかいない!


『スラッシュ!』

 定番スキルのようだが、切れ味を極限まで追及すらならこの技に並ぶものはない。


 質量の重い音とともに、地竜の左腕を砂煙を上げながら切り落とした!


「そこまでだ、無用な殺生はいらん」

 ダイが剣を下げるようバト、シムに叫ぶ。


 地竜は体をひきづりながら、南西の山へと消えていった…

 なぜ、地竜が山から降りてきて人間を襲ったのか…そこまでは現段階では明らかにはならなかった。



 3人は地竜を撃ち破った!

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