第38話 三姉妹物語~想いの先
「凄いな!あの女子、また勝った!」
見物人から歓声があがる。
現在行われているのは、中等部冒険者コースの戦闘職が集う練習試合。
中等学校3年となったチーコは学生で唯一のカタール使いとして、その実力を伸ばしていた。
「あんな接近戦であのスピード…あれは化けるな」
休日を利用して未来の騎士を探そうと来ていた騎士達からも称賛されている。
"適正無し"
それがチーコの中等で行われた能力適正検査の結果だった。
長女は中等卒業後、数年してギルドを立ち上げた。初心者育成を重視した新しい形のギルドを展開している。
次女は両親の薦めでナイトギルドに入った。
プリースト合格もほぽ確定し、来期からはナイトギルド職員兼冒険者として活躍の場を広げている。
三女こと、チーコは無能判定で入学当時は随分と肩身の狭い想いをしていたが、持ち前のガッツで逆行をはね除け、今となっては冒険者コースのトップクラス。
当時では珍しい武器でもあったカタールを習得し、対応出来ない相手を次々と倒し、また、研究されていたとしても、剣が主流の中等生達は"超接近"のカタールと、恐れも無しに懐に飛び込んでくるチーコに翻弄されっぱなしだった。
この日は偶然にも長女、次女も練習試合を見学に来ていて、チーコの戦闘職としての成長に度肝を抜かれていた…。
長女「ちょ…なによあれ、見たことなきスタイルよ?!」
次女「私は一年間だけ中等同じだったので見たことありましたけど…、さらに技を磨いてますね」
三女(あと、1つ…)
ハァハァ…息を切らしながら待機場へ戻るチーコに姉妹は駆け寄って声をかけた。
長女「チーコ!」
三女「あ、お姉ちゃん、カーコ姉も、来てたんだ」
次女「久しぶり、見させて貰いましたよ」
三女「ただの練習試合だよー、恥ずかしいなぁ」
長女「次は決勝でしょ!やっちゃいな!」
次女「気を付けてね」
三女「ありがと!頑張る」
練習試合とはいえ、参加者は本気だし、上位入賞者は全員男子。
決して力が強いわけでもなく、姉達のように魔力に秀でていたりもしない。
チーコは度胸が良かった。ただそれだけだけど、カタール使いにとって一番大切なこと、あの人に教えてもらった"勇気"をチーコは持っていた。
能力適正では現れない能力。
それがチーコの武器。
決勝戦、相手は短めの片手剣士、ナイフでもなく、ソードまでは長くない。お互い接近戦となる相手。
(どんな相手であっても、私はこんなところで立ち止まっていられない!
私は…あの人を追いかけて、
もっと先へ行くんだから!)
決勝戦が始まろうとしている場外で長女と次女は三女の姿を感慨深く見守っていた…
長女「無能…だったのよね?チーコ…」
次女「はい…、でもあの姿を見てそれが適正だったか判断できる人は今はもう居ないはずです」
ひときわ大きな歓声があがった。
女子で決勝進出は快挙、さらに見たこともない武器と戦闘スタイル。
おまけに美人。
これほど中等の武道場を沸かせる場面は稀だ。
ゆっくりとチーコはいつもの前傾姿勢の戦闘スタイルを構える…
審判「決勝戦、はじめ!!」
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