第37話 三姉妹物語~冒険者
長女は中等の能力測定で魔力の高さがあり、魔導師の道を歩み始めていた。
次女は測定をするまでもなく、本人が元からプリーストを志望している。
三女「私には何があるんだろう…」
これまでの生活でもこれといって秀でるものがあるように思えないし、何になりたいかも決まっていなかった。
それから2年が過ぎ、次女が中等に上がるとき、寄宿舎生活だった長女がお祝いに帰ってきていた。
長女「カーコ、おめでとう!チーコは目指すもの見つかったの?」
次女「ありがとう姉さん」
三女「うーん…まだ…」
長女「まぁ私も決まってなくて測定したら見つかったからね、焦らなくていいけど」
それにしても、魔導師とは凄い。
魔力がよっぽど高くなければ認められない職業なのだから…
「わん、わん!」
数年前に拾ってきた犬(リキ)が久しぶりに逢った長女に甘えている。
長女「動物には好かれるのにねぇ」
次女「ビーストテイマーも珍しいかもしれませんよ?」
三女「無理無理!動物を戦わせるなんて…かわいそう…」
長女「相変わらず優しすぎるのよ…」
冒険者には成ろうと思ってる、だけど…
試しに木刀を振ってみたこともある。でも人並みの腕力しかない三女にはとても扱えなかった。
さらに1年が過ぎ、次女も寄宿舎へ入っていて、三女はリキと散歩をするのが唯一の楽しみで、この日は何か思い立って南地区の方まで足を伸ばしていた…。
王都南地区は主に冒険者が集まり、ギルドホール(詰所)などを構えている地域。
男性「可愛い犬だな、飼い主の性格が良く出てる」
三女「え?あ、ありがとうございます」
ふいに声をかけられた。見た目はどうやら騎士のよう…。
でもナイトギルドでは見かけたことがない人だった。
男性「君はこの辺の子じゃないね?東地区から来たのか?」
三女「はい、時間があったのでいつもより遠出してきて…」
あまり他人と話すのは得意な方ではない三女。
大きな剣…。こういうものを扱える人が騎士になれるんだ…。
三女は男性の装備に釘付けになっていた。
男性「剣が気になるか?冒険者志願者かな?」
三女「あ、はい、すみません、つい…」
男性「いいさ。しかし、君は華奢だな…」
うっ…。痛いところを突かれた。
三女「そうなんですよね…。剣は、向いてなくて…」
男性「大きな剣を振り回してれば良いというものでもない。スピードは時に剛力を勝る。」
三女「???」
男性「どれ…、確か練習用に丁度いいものがあったな。君に譲ろう。使ってみなさい」
そう言って鞄から一風変わった形のナイフ…、でもない。なんだろうこれは??
男性「カタールという暗殺者や身軽な者が扱う武器だ。これならば腕力は関係ない。大切なのはスピードと度胸」
三女「度胸?」
男性「全ての武器の中でも特に相手に近づくことが要求されるからな。勇気がいるのさ、君に使いこなせるか?」
カタール(木製の練習用)を受け取り、腕にはめてみる…。
付け心地は悪くない。力もほとんど使わない。
三女は心臓の奥で何かが沸き上がるのを覚えた。
三女「これ…、私やってみます!」
男性「良い瞳だ、将来が楽しみだな!」
片手を軽くあげ、立ち去ろうとする男性、
三女「あ、あの!お名前を!!」
男性「ん?あぁ、"オズ"だ。オズ・アキムハイト」
オズさん…。
立ち去る背中を見えなくなるまで見送っていた三女。
この時、三女は誓った。
いつか冒険者になったら、この人の元で働きたい!と…。
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