第31話 茜色の約束

 ハナとリコは涙の再会を果たした。


 それは二人にとって、新たなる決意の時でもあった…


「ハナちゃん…もう2度と死に急ぐような事をしないで…」

 悲しげな顔で訴えるリコ…


「アタシ…助けたかった…でも、今のアタシじゃどうしようもない…」


「うん…、だからねハナちゃん、これからは私やバトが必ずハナちゃんの前にいるから、あなたを護るから…」


「でも…アタシも護れてばっかじゃ嫌だよ…」



「ハナちゃんにもしもの事があったら、私も死ぬ」



「え?!」


「命を懸けてあなたを護るから、ね、ハナちゃん。ずっと一緒よ、約束して」


「リコさん…」


 病室に射し込む陽射しはいつの間にか傾き、茜色に染まる…、窓際に立つリコを赤々と照らしていた…


「ありがとうリコさん、アタシ、強くなります!それで…」


「ん?」


「アタシ…、アビスヘイムに行く!」


 リコを真っ直ぐと見ている少女の瞳には一点の曇りも無かった。


「解ったわ。私達もギルドをあげてバックアップするからね」


「ずっと言えなかったけど…、アタシ、オヴェリア姫の夢を見るの…」


 リコは知っていた…、しかし、自分から話してくれているハナがいとおしく、その覚悟の眼差しに気持ちが奮い立つ。


「姫様はアビスヘイムで聖石を探してって、アタシの過去や力に関係があるって思う…」


 それでもリコは複雑だった。


 アビスヘイムはオヴェリア姫の居城で地下には姫の棺も安置されていると言われている…

 城の全体は魔気に飲まれ死地と化しているが、オヴェリア姫の棺はその強力な聖石の力によって守られ続けているという…。

 そんな危険な場所にハナを連れて行けるのか?


「アキム騎士団はアキムハイト家に忠誠を誓ったギルドだ、なぁ?リコ」

 出番を待っていたかのようにダイが最高のタイミングで現れた。


「ハナに救ってもらった命だ、俺の命はハナのために使う」

「バトさん…」

 ダイの後ろから、バト、シム、サエが続いて入ってきていた。


「腕が鳴るよねぇ~」

 相変わらずの癖のある口調のシム。

「まぁ…成り行きかな」

 最後に照れ臭そうに甲高い声のサエも頷いている。


「ハナちゃん、皆でアビスヘイムを攻略して聖石を探しましょ!」


「はい!リコさん!必ず!!」



 今さらだがハナはこの時に改めて感じた。


 やっとギルドの一員になれた気がする…と。


 茜色の決意。


 それは揺るぎない絆が生まれた瞬間でもあった。

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