第25話 迫るとき。
魔気、邪気、悪気に関わる書物をハナは片っ端から読みふけっていた…
魔気とは、魔界から出る邪悪な気のことで、これに汚染された動植物は魔物と化し、魔族が憎む人を襲うようになる。
街や城はこれを防ぐ結界などを昔から施している。
邪気は、人の心に住む闇が魔気によって増幅されたもの。
1度深く邪気に囚われてしまうと自力で取り除くことは今の技術では困難で、処罰の対象となっている。邪気に支配された人は魔人(亜人)となり、人や街を襲うため早期発見、早期討伐が騎士や冒険者達の役割とされている。
悪気とは、これらの総称のことを言う、または魔族から直接出ている気のことを言う。
邪気を取り払う方法について、
完全に取り払われた事例は現在確認されていない。
聖水、聖域などによる治療でも体が持たず、先に廃人になってしまうからだ。
プリーストなどのホーリースキルにおいては人の力には限界があり、闇を打ち払う程の力を持った人は存在しない。
"存在しない"
調べても調べても、キリを救う術などなかった…
(回復系の能力者なんて…アタシなんて何も役に立たない…)
魔を祓う…そんな言葉がふと思い浮かんだ。
オヴェリア姫はおとぎ話では、魔族の進行を止め、怒りを沈めたとある…
(姫様、アタシの夢に出てくるならアタシにその力を少しでもいい…分けてください)
ただの神頼みでしかない。
解りきっていたが、藁をも掴む想いのハナにとって、あの姫様と会話をしたことが最後の希望になっていた…。
(せめてアタシにアビスヘイムに行って聖石を探すだけの力があれば…、本当に聖石が存在するのであれば、それを使えたら…)
没頭するあまり日が落ちたことに気付いたのは、外がもう暗闇に包まれてからだった。
決断の時は迫る…。
明後日からのクエスト、キリとちゃんと真正面から向き合おう。
今のアタシに出来ることはそれだけ…。
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