第24話 向き不向き

 次の日、

 ハナは最後のクエストに向けて買い出しに出掛けていた。


(家で1人になるとアレコレ考えちゃうから買い物買い物!)


「ハーナー!」

 少し離れた所からアタシを呼ぶ声、ヒロちゃんだ。


「おはよ、ヒロちゃん」

 駆け寄るヒロに振り返りながら挨拶、

「って、もうお昼だよ!ねぇ!ランチしよ!」

 半ば強引に手を引かれ二人でランチをすることになった。


 ―――

「で、最近どうなの?冒険者は」

 そういえばクエストとか、詰所に行ったりしていてヒロちゃんには全然会えてなかった。


「うーん…、まだ初心者クエストだから危ないことは少ないけど…」


「けど?」


 語尾のフェードアウト気味の濁した言葉をちゃっかり拾われてしまった。


「やっぱり、死と隣り合わせなんだな…って」


「そっか…、うん、私もさ、紹介所やってるから色々と耳にするなぁ…」

 目線を反らし、少し遠い目をするヒロ…。

「でもさ!街の人を護ったり、その倍以上の命を救ってるのも事実だよ」


 "命を救う"


 今のアタシには重すぎる言葉だった…。


 救えないかもしれない、身近な命を…。


「アタシ…、無理かも…」


 塞ぎ混み、涙がまた溢れていた…。


「こらハナ!前を向いて!」

 ハッとした!

「私の知ってるハナはどんな困難でも諦めたりしない。そうでしょ?!」

 ヒロの顔を見ると、いつもより真面目に真っ直ぐにアタシを見てくれていた。

(そうだ…。アタシ忘れてた)


「昔、川に落ちた私の帽子を真っ先に飛び込んで必死に泳いで取りに行ってくれたこと、私は忘れてないよ!」

(あ…、そんなこともあったなぁ…)


「でも、結局帽子は大人の人が拾ってくれたんだよね…」


「あはははははは!そうそう!ずぶ濡れで半泣きのハナは可愛かったぁー!」


「ちょ、ちょっと!笑いすぎー!」


『アハハハハハハ』


 いつの間にか二人はいつもの笑顔に戻っていた。


「またねー!クエスト気をつけてね!」

「うん、アタシ頑張るね!」

 大きく手を振りヒロとお別れをした。


 そうだそうなんだ、アタシはあきらめが悪いのだ!

 向き不向きは誰にだってある。

 きっとキリのこともまだ道があるはずなんだ!


 翌日にはクエストの日程を組もうと思っていたが、1日ずらしてハナは1人、図書館へと向かった…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る