episode 2-3

カチャン……

ドアの開く音がする。

無意識に横目で確認。

うん。やっぱりみる。


入ってきたその人は私の記憶にある人だった。

口と鼻の間、それと顎に生える濃いめのヒゲ。

帽子の横から見える刈り上げの髪。

彫りが深い大きな瞳。


竹下 智也だ。


その人はほかの人に挨拶するものの、

背を向けあったベンチ椅子の間を器用に抜け、

私の前にドカッと座った。

「お疲れー。」

「あ、天野っち。おつかれー。」


半年たって変わらなかったのは

竹下君と同じサイクルの班だということ。

部署は違うけど、喫煙所は一緒になる。


「やっべー。今日フル残業……」

「まぢか。おっつー。あたし定時」

「うわ、ずる。」

「いや、そっちが忙しいならこっちも後々忙しくなんだからね?」

「ヘッ」

なに、そのある芸人の一発芸みたいな顔は。






半年たって変わったことはもう1つある。







それは、私の彼に対する感情だった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る