第4話

益子の陶器市は春と秋に開催される。

当日は見事な秋晴れで、気持ちのよい朝だった。孝史ともう一人が車を出して、2台で8人のプチ旅行。みんなで陶器市を回り、帰りは日帰り温泉の予定。

運転席に座ると後部座席にうつむく央がいた。助手席には仲田が乗り込んで来る。もう一人後輩のゆみちゃんが乗り、走り出す。

「男多めだな~、こっち。あっちに乗ればよかった」仲田がふざけて言う。

「すいません」謝る央。

「仲田先輩、あたしだけじゃ不満ですか?」ゆみちゃんが仲田ににっこり笑いかける。

いや、不満なんて…と仲田。ゆみちゃんの方が一枚上手だ。バックミラーに映る央と目が合う。すぐにそらされて、過剰な反応に逆に意識してしまう。やっぱり、わざとこっちに乗ったんだよな。そりゃそうだよな。

あんまり見ないようにと思うのだが、ついつい見てしまう。見ると必ず目が合って、そして必ずそらされる。まるで逃げる猫みたいだ。


到着すると、もうすでに混みはじめていた。毎年すごい人出らしい。それぞれ見たいものがあるので、各自自由に見てまわることにした。集合時間を決めてみんなバラバラに歩き出す。

なんだかんだみんな陶器が好きでこのサークルにいるので、こういう時に話が早いのは助かる。

道路の両サイドにずらりと並んだ陶器を見て嬉しくなる。自分で焼くまではさほど気にもかけなかったが、形も色もいいものを作るのは本当に難しい。自分で辿り着くのはまだまだなので、少しずつ食器を気にいったものに替えていきたい。


ギャラリーもこの時に合わせてセールをしている。紺にほんのり朱色がさした茶碗を気に入ってさんざん見たのだが、4000円という値段に躊躇して一度店を出た。孝史が今使っている茶碗は10分の1以下の値段だ。

でもやっぱり気になってもう一度お店に戻ると、央がいた。ひとつひとつ、孝史が見ていた器を手にとっている。丁寧に順番に見て、嬉しそうににこにこしている。

この子は自分のことが好きなんだなあと思った。

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