16.11.28

職場で「しんにょう」について3人が頭を抱える、という出来事が

あった。顧客に送る荷物の宛先が「2点」のしんにょうなのに対し、

事務が送ってきた資料では「1点」のしんにょうだったのだ。


2点、1点とはしんにょうの書き出しの点がひとつかふたつか、という

意味で、どちらが正しいのか調べることになった。


幸いにもその場は「地名」ということで役所のホームページ等で

確認が取れたのだが、帰宅して調べるとこれが人名だったらもっと

調べるのが大変だっただろうことがわかった。


このしんにょうの点の問題は表外漢字字体表という、常用漢字ではない漢字

に関する議論で登場し、決まったのもわりと最近であった。


戦後の漢字施策の中で、漢字の読み書きを平易かつ正確にするために、異体の

統合や略字の採用が行われ、その過程でしんにょうも1点になった。

旧字体では2点が正式なしんにょうであり、1点は略字という扱いなのだ。

「当用漢字字体表」のまえがきに、その趣旨が載っているという。


元々、活字書体というのは中国の「康熙字典」という漢字字典を規範に作られて

いたのだが、それよか簡単にしようと略字体を作っていくうちに増えすぎ、

逆によくわからない状態になってしまった、というのもあった。

そのため、それら増えすぎた漢字を整理しようという動きが起こった。


平成12年12月8日に、国語審議会が文部大臣に答申をし、

常用漢字外でよく使われる漢字を使用する際に、字体選択のよりどころ

となるべく「表外漢字字体表」が作られた。

調査の末、印刷標準字体(1022字)と簡易慣用字体(22字)が対象となり、

さらにその中で3個の部首、

「之繞(しんにょう)」「示偏(しめすへん)」「食偏(しょくへん)」

が含まれる字は略表記でも許容される「3部首許容」という括りで

扱われることになった。

加えて、人名地名などの固有名詞も表外漢字字体表の除外分とされ、

現行で使われているものが正式として問題ないとなった。

「表外漢字字体表」自体は、印刷標準字体を示すことを目標にされたという。


これらの背景にはワープロなどの登場で、漢字に対する人々の接し方が変化した

などの事柄も関係してくるが、いかんせん長くなるので割愛する。

また、人名用漢字では旧字略字とも使用可の物が多数存在する模様。


制定されたはいいが、要は「固有名詞はその都度」ということなので、

地名はともかく、人名に関してはまだ混沌の中、というわけである。


ちなみに、逗子市の公式ホームページでは「1点と2点どちらが正式なのか」

という問いに、

「活字体によって異なるので、どっちでも正しいよ」という返答をしている。

しかし使用フォントのせいか、

「1点しんにょうの「逗」と2点しんにょうの「逗」では」、

というなんとも頭の痛くなる表記がなされている。


これだから日本語は。

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