宿題、噴水、献血
駅前広場には献血車が停まっていた。父を待つあいだ、噴水のへりに腰掛けてアイスキャンディーをくわえている。スマートフォンをいじるかわりにそうやって幼いポーズをとるのは、とっくにわからなくなってしまった父との距離感をごまかすため。なにせ、大学生になってからも会った時の第一声は「宿題は済んだか」である。
月に一度の行事も、たぶんそろそろ無くなるだろう。私は成人を迎えるし、父は養育費の支払いを終える。義務感をなくしてしまったあとで、私たちはまた会うことがあるだろうか。
改札口に父の姿を見つける。小ぎれいに整えた洋服は、私のアイスキャンディーと同じ仮面の一部なんだろう。深呼吸をすれば、私はもう父の子どもという役へとおさまっている。
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