ハーブ、洗濯機、ビアホール

 ハーブ入りのソーセージにナイフを立てる。こんがりと焼けた皮がぱつんと弾け、透明な肉汁が流れ出る。ふうふうと息で冷ますのももどかしく頬張れば、塩気と旨味が口内を満たす。

「ねえ! 聞いてんの?」

 顔を赤くした理絵が顔を突き出す。色白の手の中で、金色のピルスナーを満たしたグラスが汗をかいている。早い時間のビアホールは程よい騒がしさで、二杯目にして早くも酔っぱらっているこの友人が、多少大きな声を出しても目立たない。

「聞いてる。洗濯機が壊れたんでしょ」

「次買うのどんなやつがいいと思う?」

「わかんないよ。ドラム式はいや、機能がごちゃごちゃしてるのも無し。そこまではっきり嫌なものがわかるんなら、家電量販店にでも行って店員に訊くのが一番わかりやすいよ」

「それもそうよね」

 とろんとした目で理絵は言う。この話題、二回目なんだけど。

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