ビキニ、ピアノ、星

 いとこのヒロ兄の部屋は、僕にとっては秘密基地だった。小さい頃は、四つ年上とあってずいぶん大人びて見えたものだ。四畳半ほどの空間は程よく狭く、かすかに外国製の石鹸の香りがしていた。壁に飾られたビキニを着た金髪の女性のポスターや星条旗がたまらなくかっこよく見えた。

 僕はその部屋で、ゲームや漫画に没頭し、おばさんから差し入れられるお菓子をむさぼったりしていた。唯一我に返るのは、階下からピアノが聞こえてくるときだった。ヒロ兄の姉のミサキさんが弾いていたのだそうだが、実際に演奏しているところは見たことがない。ただ、時折見かける美しい彼女の長い指が鍵盤の上を踊るのを想像しては、耳たぶが熱くなったのを今も覚えている。

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