地図、恐竜、女子大

 前を行く麗子れいこさんのリュックが規則的にゆれている。デフォルメされた恐竜のストラップがかちゃかちゃと音を立て、つぶらな瞳で僕を嘲笑する。いわく、女子大生だからとなめていただろう、麗子はお前のひょろい身体よりよっぽど高性能だからな。


 被害妄想はそれくらいにして、呼吸を整える。ファッション自然派女子かと思えば「ちょっとしたハイキング」が山登りである。息一つ乱さず、地図を正確に読み解き目的地を目指す姿は隊長とでも呼びたくなる。


「もうちょいで休憩いれよっか。大丈夫?」

「うん……」


 気遣われるのも結構痛い。少しくらい良い恰好したかったよ、もう。

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