風呂、地ビール、哲学

 最近は夕食の前に風呂に入ることにしている。というのも、妻が飲めもしない地ビールに凝って、夕食のときに出してくるからだ。ビールは好きだし文句はないが、ことの経緯は気になっている。


「なあ、なんで地ビールなんだ」

「ボトルが凝っててかわいいのよ。それに、地域に合ったデザインとか素材で、ちょっとした旅行気分で楽しいの」

「お前は飲めないだろう。ほかにもジュースとか菓子とか、色々あるだろうに何でまた」

「最近また太っちゃったもの。これ以上カロリー摂れないわ。あなたビール好きでしょ、いつも喜んでもらえて嬉しいから」


 なんだか釈然としないが、もらえるものはありがたくもらっておく。


「今日のはヴァイツェンですって。小麦のビール」

「バ、なんだって? いつの間に詳しくなったんだ。むかし俺と哲学の話をしたいとかで本読んでた頃は、哲学者の名前も一切覚えられなかったのに」

「こういうのは相性ってものがあるのよ。興味の問題だけじゃないわ」


 やっぱり釈然としないが、妻の選んだビールは今日も美味かった。

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