パン、美術展、ガッツポーズ

 田村はパンを愛する男だった。作文も、美術の自由課題も、夏休みの自由研究ですらパンを題材にしなければ気が済まなかった。ゆえに学校では「パン男」の名をほしいままにし、生み出す作品は注目の的であった。


 実を言えばその注目には少なからずあざけりが含まれていたのだが、今回ばかりは田村の熱意を認めざるを得まい。県主催の児童美術展でパンを描いた絵が入賞したのだ。田村はこれを知ったホームルームで衝動的にガッツポーズをした。クラスメイトたちは五分以上にわたって騒ぎたてた。


 余りの情熱に、友人でさえどう接していいかわからなくなったというのはまた、別の話である。

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