にんにく、ミニチュア、桃の節句

「にんにく、入れていい?」


 台所に立った真琴まことが訊く。


「いいよ」


 と答えてダンボールからミニチュアの桃の木を取り出す。来週は桃の節句、真琴の長女の初節句だ。家主かつ雛飾りの持ち主の真琴は子どもをあやしたり食事の支度をしたりと忙しい。私の分は気にしなくていいと言ったのに、お昼は真琴お手製のパスタになりそうだった。


 手伝いに駆り出された私はといえば、ひたすらに段飾りを設営している。そういえば子どもの頃は雛人形が身につけている精巧な小物が好きだった、などと思考はあちこちに飛ぶ。


 隣の部屋で泣き声が始まった。真琴はキッチンタイマーを私に押し付けてベビーベッドに駆け寄る。


「鳴ったら火止めて!」


 タイマーの表示はあと一分。お嬢ちゃんが泣き止むのが先か、それともパスタが茹で上がるのが先か。

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