ホットケーキ、求婚、飛行船
フライパンから飛び上がったホットケーキが、半回転して着地する。つかのま宙に浮かぶ柔らかな曲線は、何故か飛行船を思わせる。
風が立って甘ったるい香水が匂う。振り向くと案の定、彼が私に手を伸ばすところだった。バニラエッセンスは入れなくて正解。
「いくらなんでも香水つけすぎ」
「君にも同じ匂いがつけばいいと思って」
「マーキング? きみの行動は動物的だな。やたら着飾るところも含めて。さながら私は地味なメスか」
「君は女の子として十分に魅力的だと思うけど。少なくとも一生を共にしたいと思ったのは君が初めてだ」
「なんて芝居掛かったセリフ。いい加減に……」
流れで口を開きかけて、手が止まった。
「もしかしてそれ、求婚?」
「そう。それより焦げるよ」
彼の手が私からフライパンを奪う。少しばかり焼き過ぎの飛行船が、陽気に半回転した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます