おむすび、禁酒、山

 大皿に並んだおむすびの山に、妻は次々と味噌を塗っていく。わたしはそれをオーブンに並べながらため息をついた。焼く前からすでに、あの香ばしい匂いを鼻が思い出してしまっている。


「美味そうだよな。日本酒が欲しくなる」

「あなた禁酒中でしょ。やめときなさい」

「その味醂みりんでいいから飲みたいくらいなんだが」

「それは『みりん風』です。アルコールは入っていないわ」


 わたしは再び、深々とため息をついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る