石、瞳、船

 港の朝はきわめて透明に晴れていた。旅装の娘が一人、停泊中の船のかたわらに佇んでいる。彼女は短い髪の下からまっさらなうなじを覗かせて、足元の石畳に目を向けている。


 潮気をたっぷりと含んだ大気が動く。彼女の頰に乱れた髪がかかる。つられたように、遠くでかもめが鳴いた。


 彼女は静かに顔を上げる。迷いのない瞳が前方をとらえ、果てしない海原を映し出した。

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