遠距離恋愛、クリスマス、かぼちゃ
同居人のナギコはいつも、わたしより一日遅く帰省する。といっても授業が理由ではない。通う大学は同じなのだから、休みも同じわけである。まあ女子大生のプライベートな都合ならひとつくらいしか思い当たるまい。
狭いアパートの台所に立つナギコを見る。どことなく浮かれたその背中には、小花模様のエプロンの紐が蝶々になって結ばれている。
漂ってくる匂いは、甘辛い煮物のものだ。ちらりと覗き見たところによると、カボチャを煮ているようである。さっきお風呂を覗いたときに香った柚子といい、数日前の再現のようである。
「冬至は終わったと思うんだけど」
「いいの、冬至は会ってないから、今からやるの」
「すると冷蔵庫のケーキはクリスマスの?」
「当たり。まさか手を付けてないでしょうね。もう売ってないし、飾りは自分で作ったんだから」
「とんでもない」
お相手がいないのにこの甘々っぷりはなんだ。お熱いことですねぇ、と捨て台詞を吐いてわたしは部屋を出る。この感じが遠距離恋愛だからなのか、なのに、なのかは知らない。ともかく精神衛生上ここに長居は無用である。わたしは実家に帰るぞ。
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