サーカス、リクエスト、ハロウィン
サーカスは終わりに近づいて、いよいよ華やかになっていた。きらびやかな衣装の空中ブランコ乗りが宙を舞っている。技を決めるたびに、薄暗い客席から拍手が起こる。
舞台は暗転し、スポットライトがついた。そこに現れたピエロが深々と礼をする。派手な色合わせの服と厚く塗った顔。コミカルな動きでぺこりと頭を下げる。
「本日はようこそおいでくださいました。最後の演目は、お客さまからリクエストをちょうだいします」
そう言ったピエロはわたしに近づいてくる。ついにはわたしの目の前で手を差し出した。
「リクエストをどうぞ」
「わたし、ですか」
「本日唯一の、人間のお客さまですから」
「ほかのかたはそうではないのですか」
「ええ、本日はハロウィンでございますから」
わたしはこの客席を埋め尽くす人ならざるものの存在に今さらながら緊張する。けれど心のどこかでは、何を注文しようかと呑気に思案をめぐらせていた。
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