第35話「神の島で」

 船に乗った神奈達。神奈は海を見て驚く。

「海ってこんなに広かったのね」

「そりゃ、地球の7割は海だもんね。水の量自体は月より小さいらしいけど……」

 そんな神奈に忍は返す。

「まあ人類は残り三割に住んでるわけだしな」

「でも面積で考えたら広いことも確かよ」

 そんな頌子に忍は頷く。

「人は陸で生きることに特化した分、海で生きることはできない。海中都市を作れば別だが」

「魔法でどうにかできたりしないの?」

 そんなちひろに忍はできるという根拠を示す。

「周囲の酸素を集めれば不可能ではない。水圧も軽減できるだろう」

 ただし、と忍は続ける。

「飛行よりも魔力を使うから現実的ではない。それよりも、水上を歩けるようにした方が効率的だ」

 ちひろは思わず抗議する。

「夢が無いわね……」

「アニメのように水中適応できる便利な魔法というものはないんだ」

「魔法もアニメみたいな物だけど?」

 そんな頌子に忍は反論する。

「現実でそこまで便利なことはできないさ。物理法則は魔法で書き換えられないんだから」

 それに神奈も同調する。

「重力に関する力場を操作すれば空も飛べるし、燃焼を操作すれば炎も作れる」

「魔力そのものをエネルギー弾としてぶつけることはできる」

 でも、といったのは忍だった。

「だからといって何でもできるわけじゃない。もし何でもできるんだったら今ごろ世界は女性優位だ」

「そして出来の悪いライトノベルみたいに、魔法を使える男性は研究対象なのね」

 ちひろの皮肉に忍は皮肉で応戦した。

「僕なんて二人も幼馴染が居て、姉だって居る。これもできの悪いラノベなのか?」

「事実は小説より奇なりとはいうけど、現実はラノベよりも奇なりね」

 ちひろは応戦されていい返す意欲が萎えたようである。

「いずれにしても、この状況がいいとはいえないわね」

 そんな神奈に、忍は首をかしげる。

「ニューワールドは上手く撃退しているんだろう?」

「ニュースを見てないの?もうアフリカ諸国は陥落。ラテンアメリカも危ないらしいわ」

「そういやそんなこともいってたな」

 この頃の忍は危機感がなかった。しかしそれは神奈達もだった。

 事実神奈は忍に同調したからだ。

「まあ、遠いところの話だし。ロシアが落ちたことで世界は危機感を持っている」

「だから、ヨーロッパやアメリカが落ちるわけがないよな」

 しかし現実にはヨーロッパとアメリカも陥落。

 アメリカは粘ったがニューワールドの長である『レジストール』によるホワイトハウス掌握で、

降伏せざるを得ないところまで追い込まれたのだ。

 そしてすかさずニューワールドは中華民国を陥落させ、

神奈達の修学旅行があった日には日本を攻めて来た。

 しかしそこでレジストールは討たれ、その混乱によりニューワールドは壊滅状態へ追い込まれたのだ。

 だが、ゴールデンウイークの時の神奈達はそれを知らないのである。

 むろん当時の忍や理香子もそれを知る由はなかった。

「さて、揚げもみじを食べに行こう」

「僕が案内しないとはぐれるぞ?」

「もちろんそのつもりよ」

「君は意外と策士だな……まあいいが」

 忍は理香子の好意に気づいていなかったが、近くに居たいという思いは感じていた。

 しかし忍はそれを友達だから当然、くらいにしか考えてなかった。

 小学生とはいえ、羨ましい限りである。

 筆者も思わず嫉妬してしまったが、ともかく彼らは揚げもみじが売ってある店へと向かう。

 そしてその店に着くと、さっそくそれを注文するのだった。

 お金を払い、それを貰った神奈達は驚く。

「うわー、熱々で美味しそう」

 そういったのは頌子だったが、忍も同調する。

「これは中々良さそうだな。僕が頼んだのはクリームだが、温まっていてまた美味しいんだろうな」

 忍は所謂甘党というものであった。

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