第33話「ホテルにて」

「金欠でメンタル病み気味な人なら知ってる、って私知らないはずなのに」

 神奈がそういったので頌子はこう返す。

「金の亡者寸前になっててまずいからこうやって自虐するしかないのよ」

「相当追い詰められてるわね……『同情するなら金をくれ』だろうけど」

 ちひろはそう続けるが、神奈は返す。

「もう自重しないと色々匙を投げられるから止めにしよう」

「そうね。せっかくのバイキングだから色々見ていきたいし」

 というわけで神奈達はバイキングの料理を取っていく。

 そして戻ってくると、彼女達はそれを見比べる。

「神奈はパスタにカレー……なんか統一感がないわね。トマトとチーズはあるけど」

「そういう頌子は普通ね。バランスが悪いわけでもないし」

「ちひろは肉が多い気がするけど」

「野菜だってあるし、バランスがひどいわけじゃないわよ」

 神奈がそういうと、三人は一斉に手を合わす。

「いただきます」

 そして神奈達は料理を食べていく。

「このトマトにチーズ……どこかの漫画であった組み合わせだけに相性がいいわね」

「あれの作者って結構リサーチスキルが高いから」

「そうだったの、ちひろ?それは意外ね」

「私のそういう情報集めるスキルを舐めないでよ」

「どういう情報なんだか」

 頌子はあきれるようにそういったが、神奈は返す。

「だけどそういうのを調べるのって割と大変なのよ?」

「そうね。テストで参照可能でも、何書いているんだか分からないと解けないって現象もあるし」

 そんなちひろに頌子は続く。

「英語の授業ね。分かる気がするわ。あれは何言ってんだかさっぱりだから」

「覚え方はあるわよ。『降り終わり』で『フレンド』とか『パーレイ』で『プレイ』とか」

「神奈のそれってなんだか歴史の年号みたいね」

「似たようなものよ。リスニングを勘で解いたり、数式を頭の中で計算した方が電卓より早かったり」

「そんな人間は軽く天才だと思うけど」

 ちひろの突っ込みに神奈は返す。

「割と暗算の方が電卓より簡単な計算なら早かったりするわ」

「二桁の掛け算を電卓より暗算の方が早いと思う人が父親なあなたにはいわれたくないわね」

「まあ、そういうなって。ちひろだっけ?神奈から話は聞いていた」

 そういった忍に頌子が反応した。

「忍、いつの間に?」

「ちょっと合流が遅くなったが、後から来ると連絡していたからな。今料理を取ってきたところだ」

 むろんこの忍は2022年当時の忍であり、

現在の忍がタイムスリップしたわけでないことを予め断っておく。

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