第30話「広島到着」
「ご馳走様でした」
神奈達がそういうと、頌子は問う。
「ところでさ、広島には六年前オバマ大統領が来たっていうけど」
「ええ。だけど次の大統領がトランプになったんで議会は大慌てしてたみたいね」
まあ、と神奈は続く。
「輸出入では強硬だったけど交渉のおかげで日米同盟は現状維持」
「中国も迂闊には手を出せなかった、までは良かったらしいわ」
ちひろは聞き返す。
「らしい?」
「魔法の発見された2018年。つまり私が小学二年生の状況で魔法を公にするきっかけとなった年」
「もしかして」
「そうだけど、それは偶然だったの。私は流れ着いた中国人を魔法で治癒した」
「その中国人が『こーさくいん』だったんだっけ」
頌子は『工作員』の意味が分かってないようだ。
さすがに小学生が分かるものでないのだろう。
「そう。彼らが魔法の存在を証言し、日本はパニックになった」
「魔法なんてあり得ない、何かのトリックなんじゃないかって意見もあった」
神奈は振り返るように続けていた。
「だけどトリックは何もないことが近くの防犯カメラで確認された」
「魔法の実在は一気にニュースとなり、話題になったのはみんなも知る通りよ」
その後は、と神奈は続く。
「どうなったかは分からない。けど一ついえることとして『こーさくいん』は無意味に終わった」
「何故なら、中華人民共和国は崩壊したからよ。中華民国主導のクーデターでね」
それは知ってる、といいたげな頌子は知識を披露する。
「確か、チベットとウイグルもそれで独立したんだっけ」
そう、といわんばかりの神奈は続ける。
「中華民国のクーデターにより、中国経済は事実上の破たん。世界は空前の不況になると思われた」
「だけど魔法の発見によりその手の特需が発生しそれは帳消しとなった」
ちひろはそれに続く。
「『魔法のもたらした奇跡』だってばか騒ぎになったよね」
「まあ単なる研究機関によるプラスのサイクルってだけらしいけどそこはニュースでしか見てない」
「大事なのは中華人民共和国の崩壊よ」
神奈の言葉に、頌子はこう応える。
「それで朝鮮民主主義人民共和国、通称『北朝鮮』が孤立無援になったんだっけ」
「その通りよ。だけど大韓民国に核を持たせるのも危ないってんでどさくさで核施設は破壊」
そして、と神奈は続ける。
「核の設計図も燃やされたから朝鮮統一に成功しても韓国は核を得られなかったのよ」
「まあ、韓国の人が反日感情を持つのも分かる気はするわ」
頌子の言葉に神奈は返す。
「自分より劣っていると思っていた相手に支配されるのは確かに屈辱的だったかもね」
「まあどうあれ日本が韓国の近代化を推し進めたのも事実」
そして、と神奈は続ける。
「いつまでも過去のことでいびられ続けてもたまった物じゃないのよね」
「ネットあるあるでもあるけどね。ネットの人もその点では同じよ」
「頌子、そんな辛辣なこといってると危ないわよ」
「平気よ。どうせそういう人はデモを行うくらいしか能がないんだから」
「なんだろう、かなり危ない発言な気がする」
頌子の発言に戦慄する神奈だったが、頌子はそれに気づいてないようである。
それはともかく新幹線が京都に着く。
「なんていっている間に京都ね」
神奈がそういうと、頌子はこう返す。
「京都か……雅だとは思うけど、どんな所か想像しにくいわね」
「さらっと話題を変えたわよね?」
「それは気にしちゃ駄目だよ、ちひろ」
「停車時間も長くはないし、少しだけでも京都情緒を楽しもう」
神奈がそういうと、三人はカメラを出してホームを撮影していく。
いわゆるインスタントカメラであり、
2022年でもスマホを持たせたくない親にはまだ需要があったのである。
だからどうしたといわれればそれまでの話ではあるが。
京都を過ぎ、神奈達は本格的に西日本へと突入することとなっていた。
「まだこれでも二時間はかかるんだっけ」
「中国地方は広いからね。狭い日本とはいわれるけど、島国特有の幅広さってことかしら」
「頌子のいってることが正しいかは分からないけど、まあこれも旅行の一旦だし」
ちひろはいうが、さすがに集中力が切れて来たようだ。
ゲームで暇をつぶすこととなったため、会話も切れた。
そして二時間が経過する。
「ここが広島……駅の周辺はさすがに都市っぽいけど」
神奈が広島駅周辺を見た第一印象はそれだった。
「今日は花の祭典を見に行くから、五丁堀まで路面電車だっけ」
「頌子は中々下調べができてるのね」
「そういうちひろも確かめている癖に」
「でも駅弁食べたばっかりで出店を見れるかな」
神奈の心配に頌子が突っ込む。
「あれから二時間以上は経ってるから心配要らないと思うけど」
「本通にホテルがあるから、出店を見終わったらTOGO6階のパケモンセンターに行くわ」
「ご当地のキャラクターグッズがあるからね」
ちひろは呆れたようにいった。
「私達も付き添うから、あんまり先に行かないでよ」
保護者の突っ込みが入ったところで、神奈達は路面電車のホームへと向かう。
「それじゃあ、しゅっぱーつ!」
そして五丁堀に着き、祭典の会場に向かうと人で溢れかえっていた。
「さすがに人が集まっているわね」
「ちひろは驚いているみたいだけど、この花の祭典は結構人が集まるからね」
すると、何人かは神奈に気づく。
「あの子ってもしかして『始源の魔法少女』じゃない?」
「ってことは『放課後のメイザード』か!名古屋に居るんじゃなかったのか?」
それを見た少女、かんなは両親にいった。
「かみなじゃないけどかんなは居るよね?それに神奈が困るわ」
それを見ていた神奈は彼女についてこう述べる。
「中々しっかりした子ね」
「そうかしら?案外プライドが高い子に育ちそうよ」
頌子の返しに、ちひろはいう。
「まさか。彼女は気立てもいいし、そんなことにはならないと思うけど」
「実際育ってみないと分からないけど、見ず知らずの子だし将来なんて分からないわ」
頌子の言葉を受けて時を越えてくしゃみをする音が聞こえた気がするものの、多分気のせいだろう。
いくらなんでも過去の噂話でくしゃみなんてしないだろうから。
「さて、ご当地料理もそろっているわね。ケバブもあるかしら」
「ケバブ?あの漫画で嵌ったの?」
ちひろの問いかけに神奈は答えた。
「興味が出たのよ。トルコ名物らしいし、こういう時にしか食べれないと思って」
「なるほどね。神奈らしいといえば神奈らしいかな」
そして神奈はケバブを見つける。
「お母さんからお金は貰ってるから」
さすがに小学生といっても六年生なのでお金の管理はできる。
なので神奈はお金をあらかじめ貰っていたのだ。
保護者が付いているのは、要は犯罪に巻き込まれるのを防ぐためである。
「さてと、いただきます」
ケバブを受け取った神奈は、そういってそれにかぶりつくのだった。
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