第12話「ネオナチス驚異の策略」

 忍はいわれたことを思い出しつつ『拓夢』を探していた。

(単純、か……そうかもしれないな)

(だが同じような奴が危ない目に合っていると聞くと他人事に思えない)

 そこが単純なのかもしれない、と思っていると忍は拓夢に出会う。

「服が濡れてるね」

「心配はいらない、一応上着は羽織った」

「ボクが向かわされたのはトラブルを避けるためみたいだね」

「ああ、できるだけ人目に着きたくないしな」

「ボクなんかはそうでなくてもあれだったし」

 拓夢を装う美夢は苦笑いした。

「まさか向こうからバラすとはな」

「とはいえどこから漏れていたの?」

「一応、特定秘密保護法における保護対象のはずだといいたいのか?」

「まあ、内容が内容だけにアクシデントが起きるのは仕方ないってなってるけど」

「その答えはあの船だ。あの船『だった』が正しいけどな」

 そんな『彼』に忍は首をかしげた。

「船に行ったの?」

「あの船は諜報部員の引き揚げ用だった。つまり今回の襲来自体囮だったのさ」

「フェイクであれだけのことをやるなんて……」

「世界が混乱しているとはいえ、ネオナチスの規模が大きいとはいえない」

「だから賭けに出たというの?」

「賭けってほどじゃないだろう。あくまで引き揚げが目的なんだからな」

「いずれにしろ、ボク達はまんまと嵌められたわけだね」

「まあな。俺も命からがら水落したわけだ」

「相手に魔法少女が居たの?」

「いや、何があるか分からない以上うかつに変身するのは危険だ」

 忍はその慎重さがあるなら、といわんばかりに噛みついた。

「ボクに迎えさせるのはどうなのかなと思うよ」

「済まない。俺のことがバレるのも不味い」

「相手にはバレてるだろうけどね」

「君も隠してるんだろ?なら、お互い様だ」

「そういわれてもあまり納得できないよ」

「性別を隠すのは不満か?」

 そんな拓夢に忍は噛みついた。

「国防のためとはいえ、自分を隠すなんてボクらしくないよ!」

「そういう考えで戦っているなら、負けるぞ」

「そうかもしれないけど、割り切れっていうの?」

「割り切れないのは仕方ないだろう」

 性別を隠しているというのはそういうことだから、

と拓夢はそんな顔だった。

「いずれにしろ、気を付けないとね」

「限界はあるけど、気を付けれる範囲であれば気を付けるよ」

「お前らしいな」

 忍は拓夢に小声で呟いた。

「女子は男子より直感が強い、らしい。実際どうなのかは分からないけど」

「個人差もあると思うぞ。女子でも鈍い奴は鈍いし、直感の強い男子もいる」

 普通の声で、とはいえと拓夢は続ける。

「そういう傾向があるのは事実だ。脳の構造が違うんだとさ」

「男は女としての快感に耐えられない、とかいう話かな?」

「あんなのはただのデマだ。人間のそれなんだし、そこで男女差が生まれることはないだろう」

「実際どうなのかは検証しないと分からない話だけどね。まだ技術が追いついていない」

 魔法があっても性転換は至難の業だ。自分を一時的に性転換させる場合すら魔力を著しく使う。

 他人を永続的に性転換させるなんてことは今のところ夢のまた夢である。

 マジカルロッドがあっても馬鹿にできないほど魔力を食ってしまう、

わけではないがいざという時の余剰魔力は多い方がいい。

 まあ風呂に入る際は外見だけでも女性化させればいいので問題ない。

 しかし外見だけの変化では身体への違和感が大きくなってしまうため、戦闘には向かない。

 性転換すると魔力を食い過ぎ、外見だけの変化は戦闘力が減ってしまう。

 なので忍はどちらも行わず、他の魔法少女同様服装だけを変化させるのだ。

 ちなみに服装の変化は魔法の想像を補助するためのものであるためそれは『必要経費』という物である。

 お金を使うわけではないため語弊はあるかもしれないが、まあそういう物なのだ。

 気にしすぎるとそもそも魔法は何かすら気になって夜も寝れなくなってしまうので、

止めておいた方がいいだろう。

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