第4話「空の表情」

忍はマジカルロッドを剣に変えたが、かんなのそれは杖のままであった。

「マジカルロッドを杖のまま出した!?」

「飛ぶわよ、しのぶ!」

「分かったよ、かんな!」

 二人は杖を構えて叫ぶ。

「マジカルロッド、フロートウイング!」

 二人の背中に天使のような羽が生える。

 そして二人は空へと飛び立った。

「何をしてくるか分からないけど!」

 しのぶは剣を構える。

「『何をされるか分からない』ことほど、怖い物はない」

 けど、とかんなは続ける。

「今回は模擬戦だから、一発わざと外してあげる。動かないでよ!」

「そういう余裕ぶった態度されると動きたくなる物だけど……」

 といいつつ忠告に従う忍を見て、かんなは呪文を唱える。

「ミラージュシューター!」

 すると黄色い光が忍の眼前で上に曲がる。

「あなたはどこのイギリス代表なのかな」

「そのネタいい過ぎると怒られるわよ?」

「ともかく、その曲がる攻撃は厄介だね」

 攻撃の軌道が予測できないのは、

それを回避するすべが無いといいたげな忍。

 しかしその割に、彼は妙に自信ありげだ。

「とぼけないで。あなたのスピードなら、このくらいは訳ない」

「少なくとも、表情に焦りは感じない」

 そして、とかんなは続ける。

「ここが蒼空そらだからいうけど、あなたは男の娘よね?」

「どうしてそう思うの?」

「私は分かるの。女の子達の表情を見て来たから」

「表情を?それはどうして?」

 忍は冷静に返した。内心焦っていたが、興味があったからだ。

「私は魔法少女に憧れた。2018年に、それが現実だって分かってから」

「必死に練習したわ。おかげで擦り傷も数えきれないくらい負った」

「あなたはボクが小学六年生の時、つまりクローン大戦の時居なかったけど?」

「クローン大戦の時は私は止められていた」

「止められていた?将来有望な魔法少女だから?」

 その疑問にかんなは答える。

「それなら尚更戦力にはしたいはずよ」

「ならどうして……」

「私の感受性が高いから、それを制御できないと判断されたのよ」

「女の子特有の感受性って奴かな」

 思わず本音を漏らした忍に対し、かんなは指摘する。

「そういうってことは、私の推論は本当だってことね」

「うっ……」

「流石に表情で性別までは分からない。けど何か隠していることは分かってた」

「クラスのみんなには内緒だよ?何いわれるか分からないし……」

「そこは心配しないで。私、口は堅いから」

 そんなかんなに、忍は向き合う。

「まあ、模擬戦を続けよう。あなたの力、伊達じゃないってところを見せて!」

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