第16話

「うぅ……寒い……」

「全くだ……なんで大晦日にお前と一緒に初詣の列に並んでるんだろうな、俺は」

「姐さんの思い付きに乗っかったら案の定姐さんが酔い潰れて来ないというある意味想定内の結果ですよ寒い」

「お互い暇だよな寒い」

「ほんとですよ……あ、でも参拝列に並んで年越すのって初めてです、私」

「マジかよ。学生の頃に一回くらいはやるだろ」

「基本引きこもりの私にそんなアクティブな友達がいるとでも思ってんすか?」

「ごめん、いないよな」

「あっさり発言翻されても腹立つな」

「事実を述べられたくらいで腹立てんなよ、大人だろお前も。……あ、甘酒の移動販売が来た」

「マジすかすごいですね」

「商魂逞しいなぁ……甘酒2つでー。ほれ」

「いいんですか」

「優しい先輩の奢りであることをありがたぁーく噛み締めながら飲め」

「私小さい頃甘酒飲めなくてですねぇ」

「お前最近スルースキル上げ過ぎじゃない? ねぇ?」

「なんかよくわかんない味するじゃないですか。でも年取ってから改めて飲むと美味しいなぁって思うようになったんですよねー」

「……アレだよ、舌が老化して鈍るおかげで、ガキの頃苦手だったもんが食えるようになるのと同じ理屈だろ」

「悲しすぎる」

「現実はそう浪漫に溢れちゃねーんだよ」

「御尤もです。……にしても、一年って早いですねぇ」

「三十過ぎると更に早ぇぞ」

「……三十路って言ったの、意外と根に持ってますね?」

「お前も瞬きしてる間に三十路がやってくるぞ、っていう優しい助言だよ」

「根に持ってるなぁ……」

「お、鐘が鳴り始めた」

「あ、ほんとだ。……もうすぐ、年が変わりますね」

「そうだな……お前とこんなに仲良くなるとは思わなかったよ」

「あはは。でも、おかげで楽しかったです」

「…………まぁね、なんやかんや、俺も楽しかったよ。来年もよろしくな、後輩」

「はい、先輩!」

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先輩後輩の間抜けな会話 行木しずく @ykszk

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