愛想笑いさえ面倒

朝05時。まもなく夜が明ける頃、愛犬と散歩に出かける。こんな時間だから誰にも会うことはないだろう、いや、会いたくないと虚ろな気持ちで歩いていた。

なのに

なぜそこにいる。

誰とも会いたくないからわざわざこんな時間に出てきたというのに、こんな時間からなにをしているんだ。個人の自由、なにをしようと構わないけれど、今、私の前に現れることはないでしょう。私たちを見つけたその人は犬好きですよって笑い方をしているのが、この後に起こるであろう面倒な状況が嫌でしかたない。しかも逃げるにも脇へと抜ける道はないからすれ違わざるを得ない。

犬を連れている人が優しい人とは限らないし、人付き合いが得意なんて勝手に思わないでほしい。愛想笑いさえ面倒なんだ。

さらに言うと、犬もすべての人が好きなわけがない。

やはり、そんなことはわからない様子で私たちに近づいてくる。会話は面倒だと思っていたら、軽い会釈をして愛犬に笑顔を向けるだけで立ち止まることもなかった。

私もこんなすれ違い方をしようと思った。

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