かわらないということ
2014年に訪れたそのお寿司屋さんは、また来たいって心底、思った。
2018年になり、また、伺うことができた。
くぐる暖簾が少し皺が多いのは、年月がそうさせたのかと感じた。
戸を開けると、変わらない白木のカウンターが見える。
違ったのは店主の装いが白から青に変わっていたことと、一回り大きくなっていたこと。金曜日の19:30 我々3人で席はいっぱいになった。
6500円のおまかせを注文、青森の日本酒を頂いた。
最初に出てきた旬の小鉢、味が濃い。醤油がきつい。
次の前菜三点盛も。
お祝いの席故に、何も言わない。横にいた奥様も、どうやら同じ思いらしい。
カウンターの一番奥の端にご常連の70歳ほどの男性が一人、お隣のご婦人方お二人をまき込んでのにぎやかな話が続く。店主も巻き込まれて笑いが起こる。
薄く張りつめた緊張感がなくなってる。
ミシュランに一度掲載され、でも連続して掲載されなかった理由がそこかしこに見える。そういう目で見ているからかもしれない。
店主の声は大きくなり、どたばたと移動する。店主の後ろの棚には大きな鍋がレジスターと並ぶ。そこには雑然とした空気が漂っている。
面白おかしいやりとりは続いているけれど、もう笑えない。お祝いの席だからしかめっ面はしない。しないけれど、せめて、カウンター中ではもっと所作を静かにお願いできないか?
あれだけ感激した鰤も、味の深みは色褪せてた。
大好きな雲丹。軍艦にした海苔が剥がれ、雲丹で汚れていた。
進歩なんかしなくてもいい。開店して2年目の、あの頃の鮨をじっと見つめて作業する眼差しを大切にしてほしかった。
ミシュラン掲載もいいことばかりではないようだ。どこかで、なにかがズレてしまった気がしてならない。店主、客、金、女と変化の要素はたくさんある。
大切なものは変わってはいけない。
変わらないといけないこともある。
でも、私も心しないと。
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