005 文芸少年


 1


 もしかしたらと思って、制服に着替えて寝たのは正解だったらしい。こっちに戻ってきたら、制服を着ていた。これは、俺の読みがあたった。この次が予想外の発見かつ問題である。魔剣を持ってきてしまった。向こうからも物を持ってこれるみたいだ。いや、感心してる場合じゃない。魔剣なんてものこの世界に持ってきていいものなのか?そもそも魔法って、この世界で使えるのか?学校に持っていった方がいいだろうか、しかし剣なんか持っていたら銃刀法違反で捕まってしまう。どうするべきか、、、

「………みえなくなーれ」

 ガタンッ!

「お兄ちゃん遅刻するよ!」

「ほうっ!!」

「は?何びっくりしてるのよー、早く支度してね。」

「お、おう、」

 春香はドアを閉め、駆け足で階段を降りていった。

「びっくりした。ん?」

 自分の影から黒い触手のようなものが、魔剣を包み、影の中に引きずり込んでいき、消えた。

「え?、え、え、え⁉︎ちょっと、魔剣!返して!」

 すると、また影から黒い触手のようなものが伸び、手元で開き、魔剣が現れ、手渡すとまた、影の中に消えた。

 な、なんて便利な能力!すげえこれなら魔剣をしまっておける!闇属性の能力なのかな?いやぁ、これは使える。試しになにか…

「お兄ちゃん、はよ!!!」


 この能力について色々考えながら歩いていた。どのくらい入れられるのか。どこまでの物を入れられるのか。自分の能力について知るのは、これから先、一番重要なことだ。さて、どうしたものかな、

「おはよう、灰崎くん。あの、ちょっといいかな?」

 朝からおれに話しかけた物好きは、1人の男のだった。


 2


 こいつは、同じクラスの夢見一ゆめみはじめ、茶色がかった髪に、高い声、言われなきゃ女の子だと思ってしまうほどかわいい。というか、下手な女子より全然かわいい。本人が別に女の子っぽくしているわけではない。恋愛対象も女子だと聞いた。初めて会った時、俺は完全に女の子だと思っていて、彼が色々話してくれた事がある。しかし、関わりがあったのは、その時ぐらいだ。

「お、おはよう、なんだ?ちょっとって」

「えっと、、そ、、その、、、」

 こら、夢見、早く話してくれ、周りの目が完全に、うわ、夢見くん灰崎に脅されてる。みたいな目で見てるから。

「その、、、灰崎くんって、本好きだよね!文芸部に入ってくれないかな!」

 ぶ、部活勧誘だと。いやいや部活とか今の転生サイクル生活だけでかなりきついのに部活はまずい。ここは、

「いや、文芸とか、俺が読んでるの大体ライトノベルだし。」

 はっはー、オタクだと思われたかな。いや、これは犠牲が出ても仕方ない。リスクは付き物だ。

「大丈夫!ライトノベルってのは、よく分からないけど、本が好きなら大丈夫!灰崎くん、毎日違う本読んでるからすごいと思ってたんだ。あ、ごめん、毎日見てるなんて、気持ち悪いよね。」

「い、いや、全然、そんなことは、」

「今、文芸部、部員僕しかいないんだ。1人じゃ、特に活動する事も無いから、、だから、、」

 すると、夢見は、涙目になって、俺の手を握り。

「お願い!文芸部に入ってくれませんか?」

「………わかった。入る」

 おぅふ。



 3


 文芸部の活動は、本の感想などを部員内で話し合い。週に一枚、一、二冊の本を紹介する文芸新聞の作成する。週に一枚とあって、以外とハードだ。それを1人でこなすのは、確かに大変だ。

「ここが灰崎くんの机ね!あと、ロッカーは、自由に使ってね。」

「あぁ、ありがとう。」

「それとさ、」

「なんだ?」

「これから一緒に部活やる訳だし、クラスも一緒な訳だし、、、しんじって、読んでもいい?僕のことも、はじめってよんでほしいな?」

 おぅふ、なんつー破壊力だ。ユオンさんや二番隊のみんなも名前で呼んでくれていたけど、それは先輩や、上司からや、運動部的な名前呼びであって、クラスメイトからの名前呼びは、なんかこう、気分が違う。

「あ、あぁ、よろしくな、はじめ。」

「はわぁぁ!うん!よろしく!しんじ!」

 おぅふ。


 あのあと、部活の活動内容の説明や、活動日についてなど、色々話した。顧問も茜谷先生だと聞いて、ほっとした。

 しかし、明確には言っていないが。はじめと俺は友達になれたんだろうか。名前で呼びあってる訳だし、友達だよね? いや、単に部活仲間ということも、、、

 家に帰って今日のことを春香に話すと、なぜか夕飯が、ちらし寿司になった。


 今日は、こっちの世界でもいい一日だった。初めて、こっちの世界が充実してると思えた。変わっていくのかな。そんなことを考えながら俺は眠りについた。

『『『『ドクンッ』』』』

 さぁてと、任務開始だ。

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