004 神器
1
「おはようございます。」
「あぁ、おはよう!どうした?暗い顔して、なにかあったのか?」
「いえ、なんでもありません。」
言える訳がない。言ったところで何か変わるわけがない。
「それで、話って、」
「あぁ、シンジに我々、王国騎士隊の仕事について話しておこうと思ってね。王国騎士隊には大きく分けて2つの役職に別れる。1つ目は警備隊、王族や王国の警備をする仕事だ。そして我々のような隊に数字の入った部隊は、遠征隊と言われている。遠征隊は、闇の神器と言われる神器の調査、回収、破壊するための部隊だ。闇の神器とは、この世界を闇が包んだ時に、ある男が闇を10に分けて10の神器に封印した、それが闇の神器だ。」
「じゃあ俺たちは、闇の神器を探しに行くと?」
「今回の任務は調査だ。神器は各地に何種類もある、その中から闇の神器を探し出さなきゃいけない。今回は神器と思われるものを発見したのでそれが、闇の神器なのかそうでないのかを見定めなきゃいけない。そのための調査だ。」
「なるほど。わかりました。」
「よし、それでは、各自準備をして2時間後に出発する。解散。」
「「「「はい」」」」
食料、水、キャンプ道具、様々な荷物を準備する。なんだか、冒険らしくなって来たな。でも、正直不安だ。野宿する際、もとの世界に戻った俺の体はどうなるんだ。もしその時、魔物に襲われたら?考えれば考えるほど不安になる。なにも起きないことを願うしかない。
「よし、全員準備はいいな。」
全員が静かに頷いた。
「これより、本国西部、エドラ村付近の洞窟内で発見された、神器と思われるものの、調査に向かう。エドラ村までは1日半ほどかかる、途中、ゴブリンの縄張りを抜けることになる。全員、気を引き締めて行くぞ!」
「「「「はい!」」」」
2
ダカダッダカダッダカダッダカダッ
こっちに来て一番びっくりしたことかもしれない。俺は馬に乗れた。体育やなんかでも、別に運動がすごく出来るわけではない。成績も3だ。そんな俺が馬にすんなり乗れた。すごくないか?乗馬スキルなんか習得したのかな?
「全員速度を落とせ」
どおどお、ゆっくりだブルズアイ。いや、馬はいい、人より全然接しやすいし、ちゃんと気持ちもわかる。尻尾振るしな。
「ここからはゴブリンの縄張りだ。馬を走らせると音で寄ってくる。歩かせゆっくり進むぞ。」
なるほど、走らせないほうがいいのか。それにしてもなにか変だ。
「あの、ユオンさん。」
「なんだい?シンジ。」
「ゴブリンって、どんな所を縄張りにするんですか?」
「うん、ゴブリンは、虫を好んで食べる。とくにカブトムシ、だから樹液の出やすい木のある、虫が集まる森を縄張りにするんだよ。」
「なるほど、ありがとうございます。」
やはり変だ。虫が多いならそれを狙う他の動物、爬虫類がいたっておかしくはない。なのにさっきっから動物どころか、虫すら周囲に感じない。静かすぎる。まるでなにかから離れて行くように。考えられるのは。
「俺か…」
「ん?どうかしたか?」
「いえ、なんでもありません。ユオンさん、ここ、走り抜けて大丈夫だと思います。」
「え?」
「大丈夫です、ゴブリンは多分来ません。信じてください。」
「……よし!わかった!全員、スピードを上げろ!縄張りを突っ切るぞ!」
「「「「了解!」」」」
予定では明日の昼に着く予定だったエドラ村に日暮れには着いてしまった。
「いやぁ、シンジの判断のおかげで予定より半日も早く着いちまったよ!すげぇなシンジ!なんでわかったんだ?」
「僕も知りたい。なぜゴブリンが来ないってわかったんだ?」
「いや、えっと…はっきりとは言えないんですけど…」
「なんだよ、はっきりいってみろよ!」
笑いながらマックが肩を組んできた。
「おわぁ、、、、いや、、俺の魔力のせいか、周囲の命を感じ取れるみたいで、森には虫一匹いないみたいで、、、それと俺以外のみなさんの馬たちが、怯えてるみたいだったので、もしかしたら俺を避けてるのかと思って。」
「うん、、、それであってると思うよ。全ての生物にとって闇は脅威だからね。」
「はい、まぁ、使える能力ではあると思ってるんで。」
「そうだな。よし、夕食にしよう、明日が本番だ。しっかり食べて、今日は休むとしよう。」
「はい。」
そうして俺たちは、夕食を済ませ、明日に備えて眠りについた。
『『『『ドクンッ』』』』
「ッツ、、、痛みにも、慣れてきちまったな。」
俺の部屋を見渡す。ただいま。学生生活。
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