玉緒アキラのモデル(ネタバレ無し・作文風)


 

 イナミ編ラストに少し出て、いきなり『2』と『外伝』でメインキャストに台頭した玉緒アキラ。

 あり得ない強さの彼女には実在のモデルがいます。無名で、カムイ使いでもありませんし、『外伝』のようなダークサイドじみてません。秋澤にとっては数多いジェダイ、あなたと同じ。


 こんなことを書くべきでは無いのですが、最近のニュース、報道業界があまりに酷いので少し、怒りとともに小学生の作文風な文にギミックを加えて書いてみます。それとペンタブを使ったりとか。


 元気な男の子が読み上げる感じですが、内容は事実ですので。



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 玉緒アキラのモデル

            秋澤 景

    

 玉緒アキラは、秋澤の高校時代の教師、A先生(仮名・男性)がモデルです。あくまでモデルです。

 当時のA先生は身長150センチ後半、体重50キロあるかという超軽量、年齢は60手前の高齢でした。手に少しだけ特徴があり、それをはね除けるほど強い方ですが、入学当初は記憶に無いほど存在感の薄い方でした。

 

 なのに一年の冬を迎えるころには「A先生はヤバイ(褒め言葉)」と話に上がるほど、優良不良問わず生徒の認知度、好感度、畏怖、敵意がぐんと上がりました。


 秋澤が当時通っていた高校は、一年の冬ごろから体育に柔道と剣道が追加されて、二年になるとそれぞれ独立したメイン授業にランクアップ、帰宅部のなのに一週間ほぼ運動させられました。


 そんな高校で柔道を教えていたA先生、ずっと教育の現場を柔道を引っ提げ、突き進んでこられた功労者。


 今でこそ凄いと思えるのですが、当時の生徒の中でいくら急上昇しても『影のドン』とか『隠れボス』のようなあだ名で呼ばれたりして、喧嘩自慢の延長でした。


 思い返すと結構、ハードな授業だったせいなのかもしれません。クラスには、柔道経験者や他府県からスポーツ入学していた現役柔道部員もいたのですが、最初の月末には力量とか関係なく生徒同士で乱取りさせられました。(体育会系なら当然かもしれませんが秋澤はスポーツが不可能な体質になり、やがてどんどん病気がちに。どの教科、教師も根性論か精神論、最終的にキックアウトかドロップアウトかの二択を強いられました)


 身長や体重が近い生徒同士での乱取り。そのルールは今日は大外刈りのみ、今日は一本背負いのみとか技を絞るぐらい(もちろん打撃なんて論外、絞め技も禁止)、授業時間の半分近くを占めていました。


 授業は掃除から始まり、口頭での技の説明と実演を受け、準備運動後に受け身の練習、技の練習。特に受け身はしっかり教えられたため、怪我した記憶や怪我人が出た記憶はありません。陸上競技とか球技では脱水症状とか突き指とか憑き物のようでしたけど、いまでも不思議です。


 ストレッチや受け身と同じぐらい礼儀作法(柔道場に出入りするときの挨拶、掃除方法、神棚への礼などなど)を徹底して義務付けられました。

 今は縁遠い生活なので忘れはじめていますが、どの生徒の誰よりも早くA先生は柔道場に入り、最初の生徒が入るころには、とっくに体を温めた状態で畳の上で正座されてました。(他のクラスと時間が繋がっただけかも)

 横には掃除道具があって、一番乗りは強制的に雑巾がけ。雪が降った日に、あまりに寒いからクラス中で結託して掃除時間を潰すために、遅刻したこともあります。柔道部員は裏切り行為防止のため、監視係とともに保健室に軟禁。

 サボるときめたら、何が何でもとことんサボる。それがクラスのモットーでした。


 集団遅刻の日、柔道場はA先生が一人で掃除をされていました。

 その姿を見て「一人でいつもよりピカピカにしてる! あ、なんか、悪いことしたっ!」と言ったのが、首謀者、言いだしっぺの生徒でした。様子を見るために偵察したら、慌ててクラス中を集めて呼び出すという珍事を引き起こしました。


 その日、ほぼ全員(本当に体調の優れない生徒もいたので、そんな生徒は除く)がA先生に投げ飛ばされたのですが、説教は、


「全員、遅い! さっさと準備体操! 説教の時間すらもったいない!」


 これだけでした。本当に、これだけ。

 もし他の教師なら笑ったり、無視したりしますが、それはその教師の雰囲気とか気分、何より人生に油断や隙があって、感じ分けていたんだろうと思います。


 A先生、柔道に命を懸けてますから。年齢もだし、実力も秋澤らとは段違い。なので、


――何故、怒る? 何故、怒鳴る?――今こそ『大人』になるべきとき――耐えろ、反論するな、癪にさわるが――気づかって、詫びたらこれか、ゆるすまじ――


 大体、高校生時代は学校に限らずこのようによくわからない感情の変化したと思います。皆と同じように秋澤もストレッチしましたが、パブロフの犬のように、正論には拳で返す、そんな喧嘩のスイッチが簡単にオン。

 

 保健室から脱走した柔道部員も加り、時間制限付の三十数人組み手。つまんないほどあっさり全滅しました。

 全員返り討ち。

 へばりきって、体を引きずり教室へ戦術的撤退、生徒指導部に呼び出しに備え――でもA先生の怒声に比べたら、かわいく思えて、まったく覚えてません。


 それほどまで、高校一年で一番ビビった記憶。

 同時に『おのれ(自主規制)してやる!!』と憤慨して何が何でも、次の柔道はいつだ、道場で恥を掻かせる、一本取ってやると、ものすごく変な一体感になりました。秋澤ももれなく馬鹿なので、勝手に敵視してました。


 そのせいか、A先生の言葉で胸を打つ名言とかはありません。口頭の説明は熱があるけれど、あくまで授業のそれでした。

 こちらはやる気のない(勉強とは別の『やる気』は、ずっと剥き出し)生徒ばかりでしたから。すぐ練習、実習という流れになりました。

 普段から決して多くを語らない方で、代わりに眼差しがきつく、いつも下から睨みつけている、そんな方でした。


 生徒のだらしない服装(授業の道着はもちろん、制服時でも)、掃除をサボったり技をふざけて掛けたり、口論や遅刻や無礼をした生徒、全てをつぶさにチェックされていたのだと思います。


 乱取りの時間、秋澤が相手を探していると、いきなり肩をA先生に叩かれる、つまり『さあ。やられる理由、わかってるだろ? この前のあれだよ』の合図で、本当にげっそりしました――そうやってクラスを超え全生徒が畳に叩き付けられたから、変なあだ名が付いたのかも。


 その強さについても素人からすると、マンガ、アニメの次元でしたが、玄人(柔道部員とか)からすると、試合では通用しない強さ、と何やら意味深げ。

 

 主に秋澤の場合は遅刻や挨拶の忘れから指導を受け、毎回、ぶん投げられ、畳に背を付けられてからようやく『マジ?』『なんで?』と。

 『2』の裕也と同じような感覚。痛みよりもまず投げられた状態とか、なぜ勝負する羽目になったんだと、理由を紐解こうとするけれど、まったく分からない。頭を打って無いのに、ついさっき反省したことまで忘れるほどのスピードで視界と思考がぐるん、と。

 気遣いを受け、互いに礼をした後、他の生徒を指導するA先生を見てやっとわかる。


 まず生徒の些細なミスを指摘して、喧嘩を煽る。

 後ろめたい生徒は、何故か反省や謝罪して、なし崩し的に相づちを打ってしまう。しかも「次からは挨拶しまーす。道着も着崩しません」とかぶつぶつ勝手に自爆する。(へたれに見えるかもですが、無言よりは喧嘩の口実になるうえに、怒ってくれればまだマシでした。ただ秋澤は、面と向かってすぐビビりました。その後もずっとビビッてた手前、からかう事なんて出来ません)


 A先生のスタイルは決して自分から掴みに行かない。

 腰の引けた生徒が「お願いします」と言って頭を下げても、生徒から仕掛け無い限り、仁王立ちしたまま、微動だにしない。


 生徒からすれば謝ってもA先生は返事すらなく動いてもくれないので、やがて仕方なくこちらから歩み寄って、襟と袖を掴まないと始まらないし終わらない。そこでようやくA先生は、ばっと両手を広げてからこっちの襟を掴んで、ようやく型になる。ほぼ全員がこんな感じで投げられました。


 強気だったり無視していると、A先生から仕掛けるんですが、そういう生徒ほど乱取りの回数が増えて、恐怖心も植え付けられていく。

 結構、頭を使われて最初から負けてました。


 そして何故か掛ける技をあえて言う。「大外、一本」とか予告して掛けてくる。もちろん決まらないこともあった、はず、ですが――


 当時、秋澤の読んでいたマンガでは達人との戦闘で『先に動いたら負けだ』なんて緊迫感あるシーンがありました。中学生時代はすこし憧れてましたが実際に経験した高校時代の時に付け足しました、心の中で、


『だからこそ、そっちから来てくれないと勝負にならないんです(嘆願)』と。

 

 いわゆる『威圧』とか『雰囲気』も、

『お前(秋澤ふくむ生徒)が負けなきゃダメじゃん』

『先生の準備はできたから早く終われよ』

 

 きっと『試合開始前に負けた気分になれ、でないと勝負してやらん』、これを現実の格闘技や武術の強者はやるんだな、と感じました。もちろんそれがすべてなんて思っていませんし、それだけでは『小説』とならないのですが、その頃から年末の総合格闘技が好きになったのも事実ですし、影響されてるのかなと。

 あっちは世界トッププロ同士、ハイレベルな駆け引き、勝敗が極めて短時間に集約されているから、観ていて気持ち良い。


 でもこちらはもう、年齢差からして子供とプロ。

 もしくは容疑者と執行官のようで、生徒がA先生から敗北を悟っても、降参を口にしても、動いてさえくれませんから、まず『投げてください』とならないといけない。それまで延々と無言、時々、尋問。

 やがて最初の気持ちがぽーんと、遙か遠くへなったら、勝負(A先生にしてみれば、試合でも無いレベルです)


 心とかプライドを捨てて、あっさり折れてもA先生の同意が必要なので、さあ、いざ、となりそうでならない不思議な空間を作る。


 こっちも素人なりに考えての対戦。なのに退屈に思えましたし、時間が途方もなく遅く感じる。他の生徒(指導される予感を感じて乱取り中)も、いつ終わるのか、まだ耐えてきゃだめか、心の準備ができない、となりました。


 いくら秋澤たちが子供で素人とはいえ、根性ぐらいあるし馬鹿じゃないので(偏差値は別ですが)、先の集団遅刻のクラスの三十人以上を投げ終え、初めて汗を拭う姿を見て、A先生に対抗するべく策を作りました。


 年齢差、連日の授業の連続、他のクラスや学年、部活動までこなしていたなら、もう率直に、持久戦か消耗戦――みんなで疲れさせれば、おまえなら何分かは防げるはずだ、あいつなら先生を投げられるかもと、阿呆な策をさも練ったかのようにして、その日以来、かなり頭を使いました。すぐヒートアップしましたが、


『あの小さな体を何故、動かせ無い? 何故? 観察しようか』とか、

『A先生の思うがまま、勝手にじたばた動かされて、疲れるから、投げられてしまう』とか、

『全員、まずスタミナを付ける。他に防ぐ方法は無いか、足腰の筋肉が何たら腕のスピードが――』などなど。


 でもこれ、柔道の自主トレーニング以外の何でもありません。


 自分自身の体験だし、玉緒アキラのモデルの話だし、誇張なんて省いてるのに、映画さながらの急展開、当時の阿呆なノリ、少し、引きます。

 ただもしかして思い出のほうが本編よりも……と、今、へこみました。


 知らず知らず秋澤たちは、A先生の復讐計画を練り、同時に勝手に修業をする羽目になるのですが、それは別の話です。しかも半年も掛からずに挫折して次の敵(大人)を見つけます。そちらは別のキャラですが、


 本当にそんな時期、青春があったんです。

 秋澤にあったぐらいなら、ジェダイの騎士たるA先生も、みなさんにもあるはずです。

 違うのはシチュエーションぐらいのはず。

 共通しているのは、時間はリピートもアンコールもカムバックもしません。ライフ・ウォント・ウェイト。


 A先生を動かせない理由については当時、真面目だった柔道部員、別の教師、やっきになって空手を始めた友人などから暑苦しい説教や指摘などされて、一応こういうことかなと解決済みです。

 一部ではモンスター狩り並みに討伐メンバーや装備を本気で揃えてましたけど、いろいろダークサイドに寄りすぎたと自覚して勝手に解散しました。真人間です。(しかも本人から、言うは易く行うは難しと言葉が出て、驚きました)


 そんなA先生のインパクト、実体験、解説させたいマニア心、知ったかぶりなどから、玉緒アキラの型が生まれました。もちろんファイトスタイル(仁王立ちとか攻め以外のこと)を継承させつつ、オリジナルな大里流を入れて進化させ、思想、理念など、そこにどんどんプラスして――

 

 

              おわり。


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 決してふざけてるわけではなく、そんな表現技法に頼ってしまうほどA先生は強かった。

 秋澤は語りたいがための現実的な強者の申し子、玉緒アキラということです。

 でも玉緒アキラはA先生にはかなわないでしょう。


 手に特徴がある、と冒頭に書きました。玉緒アキラも手に変な能力があります。もちろんA先生の手はまったく違うものですが――


 授業のとき口頭で柔道とは云々という中に必ず『投げてすぐ離すのは危険だから、しっかり、最後まで掴んでおくこと』


 この時、A先生は自分の手の話を必ずされて『しっかり、最後まで掴んでおくこと』、この重要性を強く訴えていました。


 いくら敵視していたとはいえ、阿呆だったとはいえ、ボーダーラインぐらいわかりますから。

 当時の生徒、誰もその手を軽んじていませんし、それが強さの元、そこを付くのは論外としていました。

 だってきっとA先生にとってのアイデンティティで最強の部分。触れようものなら……


 玉緒アキラにはそれを少し妬み、ややこしいことに引きこもりはじめました。


 最近、スポーツや格闘技で体罰が云々、パワハラ云々、男女差別が、組織が、伝統が云々と騒がれるたび、玉緒アキラは憂鬱になり、シチュエーションギャップ、ジェネレーションギャップも甚だしい秋澤(チンピラ・

ver)に問いかける毎日。

 

秋澤(チンピラ・ver)『お前(玉緒アキラ)さあ、A先生を忘れてね? めっちや強かったろ? あの人が今、ここにいてみろよ、何も言わねーし、な・ん・に・も。二人とも投げられてお終いだってば、な? あの人と同じ土俵になんて上がれねーからってさ、落ち込む理由にならなくね? 考えすぎておかしくね?』


玉緒アキラ『その先生は柔の道を行く方、拳を振り上げることは無かったはず。もし秋澤あなたらに振り上げていたとしても、それこそ菩薩の拳だったはず。これは当人たちの意思疎通が出来たからこそ。私には巷に流れる事件、根本の問題はそれが出来ないだけものが多く思えます。秋澤あなたの見ているその問題、人間関係を正せば小さく収まる事柄ではないのですか? たしかに闇で苦しんでいる人を見つけるのは、私に出来ません。声を出してくれなければ、その痛みを理解できない……でも、だからと言って、あらゆる事を、あらゆる角度から棒で突きつづけるのは、果たして『通り』でしょうか? 時に正義を謳い、盤外の人間が呪文のごとき言論で、圧力じみた改革を迫ることもあるはず、そんな暴力と私の強さを同類にされているようで――』

 



 作中で語るべき事や思いにのせて、そのような思いまで抱き、玉緒アキラはどんどん人間離れして、浮世を隔ててしまう。


 秋澤は他のキャラたちとともに彼女の手を握り、また同時に全員の問いに答えを出すまでリードしなければダメなのですが、価値観を言葉にすること、古いものと変えるべきことが増えてばかり。なかなか辛い。代弁者に語ってもらわないと。

 

秋澤(チンピラ・ver)『こっちもさ、いろいろ嫌でやったらさ、今ごろようやく役に立ったこともあるわけよ。A先生の話の時代、かなりエグいモン。マジで。誰も聞きたくねーから、チャラくしたり、問題を蒸し返すようで、そんなことしてまで伝えたいからの、アキラ。

 でもテレビもネットも続けすぎてかなり前々から飽和状態だから。だって常に誰か助けて、と、ありがとうを言い合いてぇから、何かに夢中になれんじゃねーの? 応援して心配してくれるってたぶん。

 でもさ、あんまり余裕ある人なんて少ないし、だからって、お前がガキみたいにすねんなよな。

 情報を取捨選択、余計なものはシャットダウンしろ、爺むさくなっから、ここまでじゃん』



 でも。

 でも、それができないのは――と、秋澤にとってマイナススパイラルを引き起こす、最大要素となりつつあります、『不完全迷宮~』の少女のように。


 きっとA先生に会えたら『おまえ自身、わかってるはずだろ?』と睨まれて、バッと投げられて自己解決する程度なのかも。

 もしくは、受け手と送り手がきちんと良好な相乗効果を作り云々という大きく低レベルなことかも。

 

 まず、こっちも声を出せるようにならないと。大変。



 注・

 リハビリがてら久しぶりの駄文、大好きな多視点一人称全開でした。くどいかもですが、A先生は実在しておられますし、玉緒アキラのモデルとなられるほどの方です。決してフィクションではなく。


 次は真面目に一人称で綴ります。では、また。

 

 

 

 


 

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