第27話 怨みと優しさは
『はあーまた、夢をみた。』
『おじいちゃん、また夢をみたわ』
『今度はどんな夢だった⁉︎』
『おみつさんは、小春さんの腹違いの姉で、小春さんのお母さんと結婚する前に付き合っていて、親に反対されて、無理やり縁談させられ、結婚したのが、小春さんのお母さんみたい。』
『おみつさんの母親は、女手一つで、四歳まで育てたけど、病気になって引き取る事に成ったけど、女中としてならと、小春さんの母親に言われ、姉妹だと知らずに亡くなったみたい。』
『それで、小春さんは、尼になって、おみつさんの菩提を弔う為に寺へ行くことになって、人形は置いて行ったみたいね……』
『そんな事があったんだな……気の毒にな……』
『体調はどうかな⁉︎』
『うん。寝る前より良いみたい。』
『それは良かった。』
『わたし、心から安心して、成仏してもらいたいって、思ったわ』
『成仏して、生まれ代わって、幸せになって欲しいわ。』
『そうだのう…… 幸せになって欲しいのう』
〈ピンポン〉
『はーい。あら、孝介くん。』
『上がってちょうだい。 加奈美も喜ぶわ』
『加奈美! 孝介くんが来たわよ。』
『孝介くんお帰りなさい。』
『ああ、ただいま』
『こんにちは、おじいさん』
『ああ、お帰り!』
『あの後、様子はどうでしたか?』
『いくらか、良くなったようじゃよ』
『それなら良かった!!』
『どうだい加奈美! 調子は……』
『熱は落ち着いてるし、手の痛みは、いくらか良くなったみたい。』
加奈美たちが話していると、突然黒いモヤがみんなの前に現れました。
黒いモヤは、人の形をとった。
そして夢に見た、おみつの姿になり、加奈美たちに薄く微笑んだ。
みんなは、ギョっとした。
おみつは、何か言いたそうだ。
((私は簡単に成仏なんてするものか!!))
((私の死んだ理由を、知ってくれたのは、嬉しいが、そう簡単に恨みが消える訳がない!! しかも、怨みの相手はもう死んでいるし……))
((どこにこの怨みを、ぶつければいいの!!))
((あなたたち、私を成仏させてくれようとしているみたいだけど、諦めた方がいいわよ))
((あなたたち、生まれ変わったのよね……))
((私は、死んでから、罪を犯し続けているから、生まれ変わるのは、無理だと思うは……))
『そ、そんな……』
加奈美は、何と声をかけたらいいのかわかりませんでした。
死後の事は、自分が生まれ変わったと言われても、よくわからない。
その時、孝介くんがいいました。
『あなたは、本当は、優しい人なのに、怨みにとらわれているだけだと思う。』
((私はただ、主人につかえていただけだわ))
((優しくなんかない))
『孝介くんのいう通りよ! あなたの本質は優しいのよ』
『だって、私の事を殺そうと思ったら、いつでもできたはずだもの……』
『加奈美のいう通りだ。』
((あなたたちには、負けたわ))
((今日は、消えるわ……))
と、言っておみつさんは、姿を消した。
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