第24話 悲しすぎる……

加奈美は、泣いていた。

ただただ……悲しくて泣いていた。

加奈美の顔色が青白くなってきた。

『加奈美大丈夫か!!』

『おじいちゃん…… 痛いし、熱いの……』

『なっ!! すごい熱だ!! これは大変だ!!』

『お加代さん!! 氷のうと氷水の変えを頼む』

『はい。 今、持ってきます。』

この熱は、幽霊の影響を受けたものだ。

祖父は、清めの呪文を唱えた。

何度もなんども清めの呪文を唱えた。

加奈美の呼吸は、いくらか落ち着いてきたようだ。

だが油断はできない。

『お父さん、氷のうと氷水を持って来ました。』

『加奈美の容態はどうですか?』

『今、清めながら冷やしているんだが、幽霊の痛みを共有してる状態だから、苦しいと思う。』

『私が、見ているから休みなさい。』

『お父さん、休んでないんじゃないですか』

『私が付いていますから、お父さんは、少し休んでください。』

『じゃあ、少しだけ休もう……』

(加奈美!! 頑張るのよ)

(どうして、この子がこんな目に……)

母親は涙を流しました。

そして母親は、加奈美の熱を下げる為に何度も手やおでこを冷やしました。

しばらくして、父親が様子を見にきました。

『どうだ、加奈美の様子は……』

『ええ、さっきよりは、落ちついた見たいです』

『そうか……』

『あなた! どうして加奈美がこんな目に……』

『そうだな……』


加奈美は、また夢をみた。


〈ぐっ…… ズリッズリと、恐ろしい音がした。〉

死んだ、おみつの魂が、井戸を這い上がる音だ。

おみつの魂は、お嬢さまの部屋へと向かった。

〈ズリッズリ……〉

屋敷中に響き渡るこの音……。

小春は、不気味な音に怯えた。

小春の両親や奉公人たちが、恐怖で騒ぎはじめた。

『小春!大丈夫か…… なんだこの音は!!』

音は小春の部屋に向かって近づいている。

両親は、おみつを呼んだ。

けれど、おみつは現われなかった。

『どうして、来ないんだ。』

音はどんどん近づき、小春の部屋の前で止まった。

すると突然!! 風が吹き荒れ、障子が破れ、障子が開かれた。

おみつの形をした、黒いモヤが現われた。

小春と両親は、恐れを抱いた。

これは、どういう事なんだと、小春に言った。

『私、翔太郎さんがおみつを見ていたから、腹が立って、おみつの手を打ったの!!』

『だって、私は平凡だから、おみつが綺麗で羨ましかったの……』

『おみつは、井戸の水で手の腫れを冷やしてたわ……』

『その時、他の女中が、妬いているんじゃないって……』

『勿論、おみつは否定したわ!! だけど、誰にでも好かれるおみつが、羨ましくて……』

『私、井戸で追いつめて、死なせてしまったの……』

『だから、このおみつの形をした黒いモヤは、私を恨んでいるのよ』

『なんて馬鹿な事をしたんだ。』

『ごめんなさい。ごめんなさい。』

『私が悪かったわ!! 許して!! お願い』

おみつの形をした黒いモヤは、小春の首を絞め、すーっと消えてしまいました。

首を絞められましたが、小春は助かりました。

ただ、絞められた時の手の跡はしばらく消えませんでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る