第23話 悲しみの果てに……

『痛い……痛いやめて……』

〈ガバッ!!〉ハアハアハア……

(すごい汗…… 嫌な夢だったわ……)

『痛い!! 何……』

『何なのこれ……!! おじいちゃん!!!!』

『どうした加奈美!! これを見て!!』

『なんじゃこの手は!! こんなに腫れて……』

『まずは清めてから、冷やそうか!!』

『お加代さん、塩と氷水を持って来てくれるか⁉︎』

『はい。今持ってきます。』

『加奈美! 大丈夫か? 何があった⁉︎』

『おじいちゃん! あのね、夢でおみつさんが、手を打たれているところで目が覚めたの……』

『手に痛みがあって、見たら…… 手が腫れていたの……』

『お父さん、塩と氷水を持ってきました。』

『ありがとう』

『加奈美、痛いだろうが、手を伸ばしてくれ!』

『うん。 おじいちゃん』

おじいちゃんは、加奈美の手を塩で清めそして、手を冷やした。

夢にリンクして、手が腫れるのは、おじいちゃんにも初めての事で、どのようにしたらいいのか、皆目見当もつかない。

とにかく今夜は、手を清め、冷やすしか方法が無かった。

『加奈美、おじいちゃんが付いているから、少し休みなさい。』

『でもおじいちゃん! 疲れるでしょう』

『大丈夫だよ! お前の痛みに比べれば、なんて事はないよ。』

『さあ、体力を付けないと、負けてしまうぞ』

『わかったわ! おじいちゃん、お休みなさい。』

『ああ、お休み』

おじいちゃんは、手を握り、清めの呪文を唱え続けた。


安心して眠りについた加奈美は、また夢を見た。

夢の中で、おみつは、小春に打たれた手の腫れを、井戸の水を汲んで冷やし、涙を流しながら、痛みを和らげていました。

(私が、何をしたというの…… ただお茶を、お出ししただけなのに!)

(どうして小春お嬢さまは、私にイジワルをなさるんだろう……)

(私は、お嬢さまに比べたら裕福でもなく、なんのとりえも無いのに……)

(わからないわ……)

(どうしたら、わかっていただけるのかしら⁉︎)

(それに、日に日に、お嬢さまの言動や行動が、おかしくなってきてるわ)

そこへ、女中仲間がやってきた。

『おみつ⁉︎ どうしたの⁉︎ 何泣いてるの⁉︎』

『何、この手!! こんなに腫れて、お嬢さまにやられたのね⁉︎』

『酷いわ!! 私が、旦那さまに言ってあげるわ!!』

『やっ! やめて!! 大丈夫だから……』

『ねっ⁉︎ だからお願い!!』

『なんで、おみつにイジワルするのかしら……』

『わからないわ……』

『わかった!! あなた綺麗だから、お嬢さまは、妬いていらっしゃるのよ!!』

『私なんかより、お嬢さまの方が綺麗よ!!』

『とにかく私の事は、気付かなかった事にしていて!!』

『うーん…… だけど、この手の腫れは、直ぐには良くならないわよ⁉︎』

『一生懸命! 冷やすわ⁉︎』

『無理しないでね⁉︎』

『ありがとう! お休みなさい』

『お休み』

『おみつ!! 心にも無い事を言って!! 私の事を哀れんで、さぞかし、いい気分でしょうね』

『そんな事はありません。 本当にそう思ったので、言っただけでございます。』

『どうか、お許し下さいませ……』

『私! あなたの事が嫌いなの!! 私の前から消えてくれない!!』

小春が、ジリジリ近寄って来た。

『消えて!!』

『あっ!! キャー!!!!』

〈カランカランドシャン!!!!〉

『あなたが、綺麗なのが悪いのよ!! さようなら』

この時、おみつは息があり、こんな事で死ななきゃいけないなんて!と、悲しく思いながら死んでいった……





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