第4話
もう我慢できないとわかった俺は夜、狩りに出ることに決めた。苦渋の決断だった。人生をかけて自分で肉を手に入れることにしたのだった。
覚悟を決めてからの行動は我ながら早かった。獲物を狩るときのためのタオルとスパナ、自分の顔を隠すためのマスクと黒っぽい上下の服を用意した。簡単な装備だが獲物が一匹ならこれで間に合う。あまりごてごてと凶器などを持ち歩いていたら動きにくいし、狩りの前にまわりから不審に思われることだってある。だから装備はできるだけ軽くして最低限の凶器と自分の力をうまく利用して狩ることが大切なのだ。
狩りには車で行くため、獲物を仕留めた後すぐ車に運んで拘束できるようにロープとガムテープを後部座席に積んだ。そして狩りが終わった後、部屋での食事のためにブルーシートを押し入れから引っ張り出してきた。肉を裁くためのナイフと鋸とビニール製のエプロンも揃えた。
これから人として絶対にしてはいけないことをしに行くというのに俺の顔には用意をしている時から自然と笑みがこぼれ、スキップで外に飛び出していきたくなる程気分は高揚していた。失敗した時のことも考えないではなかったが、よくわからない興奮の方が格段に勝っていた。旅行でも出発してからのあれこれより家でプランを立てている時の方が最も気持ちが盛り上がるという、あの感じに似ている。そんな浮かれた気分とリスクを少し恐れる気持ちを連れて、今からあの肉を手に入れに行く。
狩りに行く俺の姿は他人から見たらどう映っているのだろう。殺人鬼か?初デートに浮かれて頭がお花畑になったような男か?求める救世主に出会えた憐れな乞食か?
まぁ、ただの死神だわな・・・
口元だけで笑って玄関のドアを開けた。ドアの間からひゅっと入り込む冷えた空気が心地よかった。
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