第3話 レギュラー争奪戦
間もなくレギュラー争奪戦がはじまった。緊張の中でラリーが続く、自然私の筆も走る。
何試合もこなして行くんで、みんな息が上がってる。肩で息をしてる人ばかり……なのになんで? 一人澄ましてる彼! あ、二人。部長と、佐伯君だ。私はボードを見る。
彼は負けなし。
彼と部長はブロックわけしてあって対戦してない。部長も負けなし。まあ、もちろんなんだろうけどね。
最終試合、長いラリーの末に終わる。勝った方がレギュラーだったんで二人とも食い下がるようにボールを打っていた。
力強い絵が今日はたくさん描けた。
あれ? なんか趣旨変わってる?
みんなクタクタな体でボードの前に集まる。
部長は涼やかな顔でいう。
「それではレギュラーを発表する。まず、部長である俺、佐々木、駿河、津島、相沢、谷本、佐伯、以上だ」
シーンと静まり返る。佐伯君に負けてる人も負けなくても試合を見ていただろうから、誰も文句のつけようがない結果だけどまだ受け止められないのかもしれない。
「以上だ。解散。着替えを済まして、帰れ」
やっと全員が動き出す。ふー。緊張した。
私の前のネットもホワイトボードもなおされる。
私が立ち上がり帰る用意をしているとまた、部長だ。
「まだ描けないのか?」
「そんなに簡単じゃないんです」
「今日はたくさん描いてたように見えたが」
試合の合間に私を見てたの? どれだけ余裕なのよ! 確かに描いてたけど…。
「絵になる絵が描けてないんです。それじゃあ。来週もお願いします」
なにか言われる前に去らないとこのままだとコートを追い出されそう。私は慌ててその場を去る。
帰り道スケッチブックを広げる。
うーん。確かに今までよりいい絵だけど、本当に何かまだ足りない。そう足りないの。あの場所にいる理由を見つけて安堵する。
まだ、彼とほとんど話していない。口実もなければ、チャンスもない。部長が目を光らせてるから話す隙がない。
このまま絵を完成させて終わっちゃうよー。
かといってクラスが違う彼は話かけづらいし。
やばいー!遅れる!!
学校に慣れてきたらこれだ。週明け早々遅刻になる!
門の中に入る。ギリギリセーフ。だけど、急ぎ足に変わっただけ。あれ? 前にいるのは彼? 朝練が終わったんだろうけど、ゆっくりしてるなー。
「早くしないと遅れるよー」
ポンと彼の肩を叩き走り去る。声がかけられなかった彼にもこれなら話せる! ってこれは会話じゃないか。まあ、一歩前進ってことで。
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