第4話 意外な出来事
なぜこんなに眠いんだろう。春のせい? いや、ただの恋ボケのせいか。なかなか進展しない、いや進展できない自分の馬鹿さを日々悶々と考えてたのが、昨日夜中に再燃したから。あー、眠いよ。授業も目を開けるのが精一杯で、休み時間に爆睡していたら、ざわめきと声が聞こえてきた。「地学、地学」と女子が鞄や机を探ってる。
ん? 誰か地学の教科書を借りに来た? 私は机に手を入れて、地学の教科書を取り出し頭に乗せる。
「ここにあるけど」
手の中の教科書が浮く。借主は誰かと振り向いた。
「さ、佐伯君」
「ありがとう」
え、え? みんな軽く私を睨んでるよ。彼は自分の教室へと去って行く。あっという間の出来事。
莉子が近づいてきて私に言う。
「凛よく持ってたね。地学。今日ないじゃない」
「あ」
私は基本教科書を置いて帰っている。重いからね。だから、持ってた。
あ!? 私は廊下にかけ出て行く。
私のクラスはA組。隣はもちろんB組。B組にはある。そして階段を挟んだ向こうはC組。彼のクラス。その向こうがD組。D組にもあった。
歩いて教室に帰りながら考える。これは故意なのかただの偶然か。
授業が終わり、昼休みになる。私の眠気は吹っ飛んでいた。
さあ、どうなるの?
と、すぐに彼、佐伯君が私の地学の教科書を持ってくる。
「ありがとう」
なんか素直過ぎ。教科書を机の中にしまう。ん?
「お礼になんか奢るよ」
「あ、ありがとう」
佐伯君の手にはお弁当がある。なんとなく私も机においていたお弁当を持って立ち上がる。
そのまま二人で売店へ行く。ここのオススメはエクレアだと、友達が言っていた。さっきの子、莉子だ。
エクレアが冷たく冷やしてて絶品だと、言ってたけど、この混雑にうんざりして買ったことがまだなかった。
「何するか決めた?」
「あ、えと、エクレアがいいんだけど」
「じゃあ、待ってて」
佐伯君はあの大混雑の中に消えて行った。こんな中、買えるの?
一人になったところでこの展開について考える。うーん。正解のない問題を解いてる気分になるだけだった。
はあー。
と、佐伯君が帰ってきた。早っ!
手には甘党なのかエクレア二つ。え!? もしや私が二つ? 私のことどんな大食いだと思ってるのか。あとは飲み物も持っている。どんな手を使って割り込んだんだろう。列はまだまだあるのに。
「屋上って食べれる?」
「あーっと、多分」
佐伯君より先にいるけど、ほとんど変わらないんだけど、ちょっとだけこの学校に長く通ってる私が答える。
二人で屋上に行く。うわー。穴場だね。気持ちいい。今の季節は特に。
ちゃんとベンチが置いてあった。誰もいないし、いい天気、最高。
二人でお弁当広げて
「いただきます」
「いただきます」
うう、どうしよう会話。考えてなかった。何か黙々と食べてるし。……あ。
「エクレア!!」
「何?」
「冷たくって美味しいって言われてた!」
佐伯君なぜか笑ってる。
「じゃあ、急いで食べよう」
良かった。私が二つじゃなかったのね。
急いで食べると会話してられない。いい言い訳になる。いや、そういう魂胆じゃあないんだけど。
とにかく食べることに集中する。
ああ、せっかくのランチタイムなのに。エクレアを選んで後悔。だけど、会話無理だったけど、どうせ。
「ごちそうさまでした」
佐伯君が食べ終わり、飲み物飲んで、私を待ってくれている。
私も食べ終わり、お弁当を包みながら、
「ごちそうさまでした」
と言うと佐伯君は飲み物をくれる。
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