異常性を自覚した中学二年時
中学二年の夏休み明けの頃だったと思いますが、授業が終わった放課後の、クラスメートのほとんどが下校したがらんとした学校の教室で、小学生の頃からの同級生の男子と席が近いこともあり、他愛のない会話のやりとりを交わしていました。
やはり思春期ということもあり、彼は話の流れの中で自身のいわゆる「ヤリチン」エピソードを武勇伝として披露して、その顛末での失敗談をユーモアたっぷりに語り、私を笑わせてくれました。
元来のお調子者で嘘をつけない性格で、あけっぴろげになんでもプライベートな話を周囲に披露する彼は、その時に彼が幼少期に毎晩両親に挟まれた形で就寝するときに、眠りに就くまでの間に繰り返し妄想していた内容について、赤裸々に明るい口調で滔々と語り始めました。
それは、ドラえもんのしずかちゃんや、ちびまる子ちゃんのたまちゃんなどの優しくて可愛いキャラクターに、サメが獲物を丸呑みするように頭から食べられてしまうという内容でした。
しずかちゃんやたまちゃんが彼のそばに寄り添ってきて、優しく慈愛に満ちた眼差しで微笑みかけてから、二人の口が彼の頭を包み込むサイズに拡張し、そのまま頭から飲み込まれてしまう、そんな常人には理解し難い内容でした。
グロテスクな内容とは裏腹に淡々と軽快な口調で語る彼の話を、私はつとめてポーカーフェイスに聞いていました。つとめて無表情にしなければ、溢れ出てくる異常な欲望を、時と場所を顧みずに抑えることができなくなるような恐れがあったからです。
私は彼のような被虐的な、それも誰かから食べられることを妄想するような性嗜好を持つ男性がこの世に存在することに目眩がするような衝撃を受けていました。それは彼の特異な性癖に対する嫌悪でもなければ、差異に対する嘲笑や優越感でもなく、私の内に秘めた欲望を叶えてくれる存在がこの世に、しかも目の前に存在することの奇跡に対する衝撃でした。
それからというもの、私は寝ても覚めても彼を拉致監禁して身動きが取れなくなったイモムシのような彼の全身にかぶりつき、その歯触り、溢れ出る血液の味、悲鳴を上げる彼の絶叫などを繰り返し妄想するようになりました。授業中も黒板に視線を向けるふりをしながら視界の隅に映る彼の後ろ姿を眺め、ぼんやりと今ここで親しい友人やクラスメートや担任の先生の評判など全てを打ち捨てて、彼を背後から襲撃して首筋にかぶりついたらえらいことになるなーとあり得ない妄想に耽ったりしていました。
男の人を食べたい けやき @ketaru25
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